佐久間 崇文, 千葉 哲博, 鈴木 英一郎, 大岡 美彦, 神崎 洋彰, 金山 健剛, 丸田 享, 興梠 慧輔, 叶川 直哉, 小林 和史, 清野 宗一郎, 中村 昌人, 近藤 孝行, 齊藤 明子, 日下部 裕子, 小笠原 定久, 中本 晋吾, 太和田 暁之, 加藤 順, 神田 達郎, 丸山 紀史, 吉野 一郎, 岸本 充, 加藤 直也
肝臓 62(1) 25-32 2021年1月
症例は87歳男性。X年に肝S5の約20mm大の単発の肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma:以下HCC)に対してラジオ波焼灼療法を施行した。術後6ヵ月の時点で再発がないことを確認し、インターフェロンフリー治療を行い、C型肝炎ウイルスを駆除した。X+2年に腫瘍マーカーの上昇を伴って右肺下葉に結節影が見つかった。肝内病変の再発はなかったことから、肺部分切除を行った結果HCCの肺転移の診断に至った。X+5年に、肺転移巣切除後に正常化していた腫瘍マーカーが再上昇し、第6胸椎に転移性骨腫瘍が見つかった。速やかに放射線照射を行うとともに経口マルチキナーゼ阻害剤による全身化学療法を開始した。昨今の抗ウイルス療法やHCCの治療法の進歩に伴い、しばしば肝内病変を伴わない遠隔転移のみの再発症例に遭遇することがある。治療経過や患者の病態を考慮した上で、適切な治療選択を行うことが予後延長に重要であると考えられた。(著者抄録)