青木一美, 大志万浩一, 佐藤裕隆, 宇佐見俊行, 雨宮良幹, 宍戸雅宏
土と微生物 58(1) 13-24 2004年 査読有り責任著者
浄水ケーキを培土に用いた野菜育苗時にPythium aphanidermatumによる苗立枯病に対し,有効な新規バイオコントロールエージェント(BCA)を探索することを目的に,様々な土壌より分離した微生物を供試し,発病抑制能力を評価すると共に,菌を同定し微生物学的特徴を検討した。選抜を検討するためのキュウリ苗を用いた植物アッセイ条件を予め確立し,選抜の最初から用いた。微生物の分離源には環境条件の異なる22地点で採集した根圏または非根圏土壌を用い,細菌224菌株と糸状菌56菌株を希釈平板法によって単分離した。これらの微生物をPaphanidermatum汚染土に接種し,苗立枯病の軽減を指標に3回の植物アッセイを行った結果,細菌4菌株および糸状菌4菌株に有意な発病抑制効果が認められた。細菌はすべてArthrobacter属菌と同定され,糸状菌3菌株はPaecilomyces属菌,Malbranchea属菌, Cunninghamella属菌と同定されたが,糸状菌1菌株は分生子不形成のため同定不可能であった。ピシウム苗立枯病のBCAとして,これらの微生物の報告はデータベースから検出できなかった。このBCA菌株の新規性は,選抜に浄水ケーキを培土とした植物アッセイを用いたことが関係しているかも知れない。また,BCA菌株とP. aphanidermatumを対峙培養したところ,糸状菌の1菌株だけが抗菌性を示した。したがって,選抜された8菌株中7菌株は抗菌性以外の病害抑制機構を持つことが示唆された。