現象学における身体論と他者論に関心を持っています。
最近では、認知科学や心の哲学での「心の理論(Theory of Mind)」と現象学的伝統に基づいた理論の架橋を試みています。
現在取り組んでいる課題は、以下の三つです。
(1)認知科学における社会認知理論の整理と現象学的批判の再構成
第一の課題は、他者認知に関する「心の理論」論争の概観と現象学からの批判を整理することです。
本課題では、「心の理論」論争における理論説(theory theory)支持者としてチャーチランド、シミュレーション説(simulation theory)支持者として、ゴールドマンなどを取り上げるとともに、心の理論の批判者としてショーン・ギャラガーの研究を検討します。ギャラガーによれば、心の理論は「日常的な他者認知の間接性」や「三人称的態度の優位性」を中心原理としており、我々の日常的な他者経験の場面に適用することができません。以上の議論を整理することで「心の理論」論争を整理し、批判的に再構成します。
(2)他者知覚を手がかりとした現象学的身体論の再構成
第二の課題は、他者知覚というテーマのもとで現象学的身体論の再構成を試みることです。
この課題に取り組むために、古典的現象学者に属するエドムント・フッサールやマックス・シェーラー、モーリス・メルロ=ポンティの思想にルーツを持つ「直接知覚説」を内在的に検討します。これによって、他者知覚に関する現象学的身体論の再構成を試みます。
(3)現象学的他者論のアップデート
第三の課題は、(1)(2)の考察に基づき、現象学的他者論に新たな視点を提供することです。
ここでは、理論説とシミュレーション説に対する代替案としてギャラガーが提案している相互行為説の妥当性を検討するとともに、「ナラティヴ・アプローチ」に着目し新たな現象学的他者論の構築を試みます。以上によって、従来の現象学的他者論をアップデートできると共に、認知科学研究や臨床心理学での質的研究、「対話」研究などの実践的な研究にも新たな視点を提供することが期待できると考えています。
以上の課題に取り組むことで得た成果を博士論文としてまとめる予定です。
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