佐藤 栞, 中山 登志子, 舟島 なをみ
看護教育学研究 29(1) 25-37 2020年3月31日
本研究の目的は、手術看護に携わる看護師の学習ニードを解明し、その特徴を考察することを通じて、手術看護に携わる看護師の効果的な学習の促進に向けた示唆を得ることである。全国の病院の手術部に所属する看護師777名を対象とし、学習ニードを問う自由回答式質問を含む質問紙を用いてデータを収集した。質問紙の内容的妥当性は、パイロットスタディにより確保した。回答を得た372名(回収率47.9%)のうち、学習ニードを問う自由回答式質問に回答した256名の回答をBerelson, B.の方法論を参考にした看護教育学における内容分析を用いて分析した。分析の結果、手術看護に携わる看護師の学習ニードを表す36カテゴリが明らかになった。36カテゴリとは、【麻酔下にある患者の看護に必要な知識と技術】【周手術期の看護実践の基盤となる看護学・解剖生理・病態・疾患・薬剤の知識】等である。Scott, W, A.の式によるカテゴリ分類への一致率は70%以上であり、カテゴリが信頼性を確保していることを示した。考察の結果は、手術看護に携わる看護師の学習ニードが、〈手術をうける患者への看護実践の基盤〉〈手術をうける患者に固有の看護実践〉〈円滑な手術進行に向けた専門性の発揮〉〈周手術期にある患者への看護の継続〉等の9つの特徴を持つことを示した。本研究の成果は、手術看護に携わる全ての看護師が自己の学習ニードを明確にするための指標となり、効果的な学習に向け活用できる。<br>