藤村眞紀, 石橋みゆき, 佐々木ちひろ, 山﨑由利亜, 正木治恵
千葉看護学会会誌 28(1) 1-10 2022年9月 査読有り
本研究の目的は,特別養護老人ホーム(以下,特養)に入所中の認知症を有する高齢者と家族との面会の有り様を明らかにすることである。研究対象者は,特養に入所中の認知症を有する高齢者(4名)とその家族(7名)であり,データ収集は参加観察法を用いた。研究者は,認知症を有する高齢者に特養の看護師の一員として関わり,家族との面会の有り様を明らかにするために,面会時・面会前後の認知症を有する高齢者と面会時の家族の発言,行動,表情を観察した。観察内容をもとに作成したトランスクリプトを,質的記述的に分析した。個別分析では,4名の高齢者それぞれの家族との面会の有り様を明らかにし,その個別分析をもとに,本研究における認知症を有する高齢者の家族との面会の有り様を求めた。結果として,本研究の対象となった認知症を有する高齢者たちは,家族が一緒にいる時と,一緒にいない時では,異なる反応を示していた。そして,認知症を有する高齢者は,家族との面会を通して,家族からの愛情や自分への期待を感じる中で,自らの生き様を貫き,生きていく意欲が喚起され,その思いに応えようとしていたと考えられる。認知症を有する高齢者と家族との面会に着目することにより,普段の関わりの中では知りえない認知症を有する高齢者のその人らしさを理解でき,個別性に合わせたケアの検討が可能となる。(著者抄録)