本田大介
Monthly Book Derma. (347) 76-84 2024年5月
遺伝性血管性浮腫は,致死的症状をきたす可能性がある常染色体顕性遺伝形式の希少疾患である.補体制御因子であるC1インヒビターの欠損あるいは機能不全による活性の低下は,発作性に血管透過性物質であるブラジキニンを産生し,皮下や粘膜下組織に血管性浮腫をもたらすため,皮膚の腫脹,腸管浮腫による腹痛,気道浮腫による窒息などをきたす.疾患認知度の低さを背景として日本における診断率はおよそ20%程度と考えられており,適切な治療を受けられていない未診断患者が多く存在する.一方,急性発作出現時の重症化予防と早期回復を目的とするオンデマンド治療薬や発作の発症抑制を目的とする予防治療薬は,日本においては欧米諸国と肩を並べる程度に存在しているため,早期診断が臨床的重要性をもつ.本稿では,遺伝性血管性浮腫の病態や鑑別すべき疾患,現在日本で使用可能な薬剤,C1インヒビター活性が正常な型の遺伝性血管性浮腫などを含めて概説する.(著者抄録)