大澤 勲, 本田 大介, 長町 誠嗣, 久田 温子, 島本 真実子, 井下 博之, 眞野 訓, 堀越 哲, 富野 康日己
日本病院総合診療医学会雑誌 5(2) 20-25 2013年12月
遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema;HAE)は、皮膚や粘膜に浮腫の出現・消退をくり返す疾患である。消化管浮腫によるイレウスは重篤な症状の一つであり、HAEの診断がついていない場合には、無用の開腹手術を受けてしまうことがある。今回我々は、HAE患者の腹痛発作時に医師が外科的治療の必要性を想起する理由について考察することを目的として検討した。対象は当院に通院中のHAE患者19名(42.5±16.3歳、男性7名、女性12名)で、25ヵ月の観察期間中に浮腫の発作で受診した際の血液検査結果や治療経過について、消化管浮腫を伴う場合(G+)と消化管浮腫を伴わず他の部位の浮腫の場合(G-)に分け、非発作時のデータとともに比較検討した。計47回の救急外来受診があり、G+は24回あった。G+時の白血球数(10,933±2,900/μL)はG-時(7,362±1,933/μL)と非発作時(6,394±2,267/μL)に比べて有意に高く(p<0.01)、G+時の好中球分画(75.1±12.5%)は非発作時(63.2±12.0%)と比べて有意に増加していた(p<0.01)。G+時の赤血球数とヘマトクリット値(520±44万/μL、45.6±2.7g/dL)は、非発作時(459±38万/μL、41.5±2.8g/dL)に比し有意に高かった(p<0.01)。治療ではC1-INH製剤をG+時に22回、G-時に20回投与し、いずれの発作も改善した。G+の際の血液検査は重篤な腸閉塞や急性の消化管穿孔などと類似しており、外科的アプローチの必要性を想起させると考えられた。(著者抄録)