緒方 祐真, 森谷 隆広, 稲玉 直子, 錦戸 文彦, 吉田 英治, 村山 秀雄, 山谷 泰賀, 羽石 秀昭
電子情報通信学会技術研究報告 : 信学技報 111(389) 257-261 2012年1月19日
革新的PET用3次元放射線検出器(X'tal cube)は,モノリシック・シンチレータ結晶とシリコン光電子増倍管(silicon photomultipliers, SiPMs)で構成される.モノリシック結晶の全表面にSiPMsを配置することで3次元的にシンチレーション光を受光する.さらに,本プロジェクトでは,シンチレータ結晶内部に外部からレーザ照射で光学的不連続点(laser-processed boundary, LPB)を導入する.これにより,シンチレータ間に存在する不感領域を低減し,消滅放射線検出感度の向上を図る.この際,相互作用位置の弁別能を最適にするためのブロック内光学特性の設計が重要である.そこで本研究では,LPBを自由に配置可能なモンテカルロシミュレータの開発を行った.まず,LPBの光学特性を実験により取得しモデル化を行い,シミュレータに組み込んだ.また,計算効率向上のためにGPU (Graphics Processing Units)を用いて光子の追跡の並列化を行った.これによりCPUのみで計算した場合と比較し,約350〜430倍の高速化を実現した.さらに,シミュレーション精度検証のために,LYSO結晶にLPBを施したプロトタイプのX'tal cubeを用いた実験と比較したところ高い類似性が認められ,本シミュレータの有効性が確認された.