鍋谷 圭宏, 川平 洋, 赤井 崇, 夏目 俊之, 林 秀樹, 西森 孝典, 上里 昌也, 田村 道子, 竹内 純子, 田口 奈津子, 松本 ゆり子, 江幡 智栄, 光 多恵子, 石橋 みゆき, 石井 裕子, 鮫田 真理子, 佐藤 由美, 山本 晃平, 新井 健一, 松原 久裕
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine 30(1) 33-39 2010年1月31日
切除不能進行/再発胃癌によるoncologic emergencyには,主腫瘍による幽門狭窄や胃切除後の再発による残胃吻合部狭窄,腹膜播種による癌性腸閉塞などがある。これらに対する外科的介入では人口肛門造設の可能性など術式も不確定で,短時間での手術決定は容易ではない。oncologic emergencyであっても,消化器外科医は患者と信頼関係を築き十分なinformed consentを得て,合併症のない手術を心がける必要がある。患者ごとに目標を定めて入念な治療計画の下で行う外科的介入は,患者・家族にとって有意義な緩和医療となる。しかしこうした高度な医療では,多職種のスタッフにより精神的配慮ができるチーム医療の遂行が望ましく,その必要性は今後高くなると思われる。したがってわが国でも,業務を分担するチーム医療に対する合意が確立されることを期待したい。一方で,外科医を含む医療スタッフには,患者と信頼関係を築ける人間性とチーム医療の一員となれる協調性が求められる。