野村厚志, 一川誠, 三池秀敏
情報処理学会論文誌. コンピュータビジョンとイメージメディア 45(8) 26-39 2004年6月15日
視覚システムにおいて,特徴量の類似した近接領域が結合してより大きな領域として知覚されることが知られている.これを群化と呼び,領域が結合していく過程を群化過程と呼ぶ.群化過程は他の様々な視覚機能の基となる機能であり,視覚システムのモデル化の研究において群化過程のモデルの実現は意義深い.本研究では,反応・拡散モデルを用いた群化過程のモデルを提案する.基礎となるモデルは,生理学実験から導かれた神経軸索における信号伝播の様子を記述するミクロなモデルであるFitzHugh-Nagumo型の2変数反応・拡散モデルである.それら2変数はそれぞれ活性化因子・抑制性因子と呼ばれる.また,特徴量として微小線分の方向を扱い,1組の反応・拡散モデルを1つの特徴量(1方向)に対応付ける.複数の特徴量を扱うために複数組の反応・拡散モデルを導入する.提案モデルには,特徴量の類似した近接領域を結合しようとするメカニズムと,異なる特徴量を持つ領域間(すなわち複数組の反応・拡散モデル間)で相互に領域の結合を抑制しあう相互抑制のメカニズムが組み込まれている.さらに,反応・拡散モデルの抑制性因子の拡散係数を活性化因子のそれよりも大きくすることで,自己抑制のメカニズムも導入されている.提案モデルをテスト画像に対して適用し,有効性を定量的に確認した,また,モデルパラメータの設定値が群化過程に及ぼす影響についても検討した.