佐藤 弘美, 金川 克子, 天津 栄子, 田高 悦子, 酒井 郁子, 細川 淳子, 高道 香織, 伊藤 麻美子
老年看護学 10(1) 105-115 2005年
われわれは,認知症高齢者の家族2組とその高齢者をケアしている8名のケアスタッフに,2つの異なる回想法場面の編集映像を提示し,面接調査を実施し,回想法の中での認知症高齢者の変化を再現したDVD媒体がもたらす効果について検討した面接内容の特徴的な発言内容から回想法の効果について現れている表現を抽出した.その結果,認知症高齢者の家族への回想法場面の編集映像の提示で主な発言内容の表現として,《認知症高齢者の実像の受け止め》と《映像でみた高齢者に誘発された語り》が抽出された.さらに認知症高齢者の豊かな表情,たくさんの発言,そして堂々とした態度という映像を,家族に提示した後の主な表現として,《回想法の効用の実感》と《回想法への期待》が抽出されたケアスタッフへ回想法場面の編集映像を提示した後の表現として,日常生活と回想場面の比較から,《現在の姿の二面性への気づき》と《高齢者の過去の把握》が抽出された.さらにケアスタッフは,回想法の場面の編集映像に対し《回想法の効用の実感》と,回想法を連続的に実施することによる認知症高齢者に対する《新たなケアの糸口の発見》に関する表現が抽出された.認知症高齢者の変化を再現する媒体として編集された回想場面の編集映像がもたらした効果として,家族にとっては認知症高齢者とともに過ごした人生を想起する自分の変化に気づく機会となると考えられる.ケアスタッフにとっては,回想法による認知症高齢者の変化を日頃の個別ケアに適用する手がかりになると考えられる.