加賀 勘家

間質性膀胱炎(IC)において、これまでにさまざまな薬剤の膀胱内注入の有効性が報告されてきたが、保険未収載であった。国内第III相試験を受けて、2021年4月にジメチルスルホキシド(DMSO)(ジムソ膀胱内注入液50%)のハンナ型間質性膀胱炎(HIC)への保険適用が認められた。DMSOの膀胱内注入により、間質性膀胱炎症状スコア・問題スコア、膀胱痛、24時間排尿回数などの改善が得られる。本稿では、DMSOのほか、保険未収載ではあるが、これまでに有効性が報告されている膀胱内注入用の薬剤について紹介する。(著者抄録)

夜間頻尿の原因は夜間多尿、蓄尿機能の低下(膀胱容量の減少)、睡眠障害である。夜間頻尿に対する保存療法、すなわち行動療法には、夜間多尿に対するものと、蓄尿機能の低下に対するものがある。エビデンスは十分ではないが、非侵襲的であり、第一選択とすべき治療であると評価されている。夜間多尿における生活指導には、飲水に関する指導、運動療法、禁煙、弾性ストッキング使用、夕方の足の挙上、などがある。蓄尿機能の低下は、過活動膀胱、前立腺肥大症などによるものである。過活動膀胱、前立腺肥大症に伴った夜間頻尿に対する行動療法は、それぞれの原因に対するものであり、その有用性のエビデンスは、それぞれの疾患に対する大規模試験のサブ解析としては報告されているが、夜間頻尿単独に対しての研究はみられない。(著者抄録)

難治性過活動膀胱に対する治療では、仙骨神経刺激療法(SNM)またはボツリヌス毒素治療(BOTOX)が推奨されている。BOTOXは手術が簡便である反面、毒素の効果の持続は5〜11ヵ月のために反復して注入を行う必要があること、術後に排尿障害(尿閉)がみられることがある。SNM、長期間効果が持続するが、手術が2度必要となること、一部を除いてMRIが撮れなくなることなどがある。SNMは便失禁合併例にも有効で、男性OABでも排尿障害の可能性は少ない。両者の効果はほぼ同等とされているが、長期的な費用対効果はSNMの方が優れている。(著者抄録)

低活動膀胱は、膀胱収縮の減弱という機能障害、すなわち排尿筋低活動(detrusor underactivity:DU)による排出障害を示唆する症状症候群と定義される。DUは、尿流動態検査に基づき、「排尿筋の収縮力が弱いか、もしくは収縮の持続時間が短いこと。その結果、排尿時間が延長するか、ある一定時間内に膀胱を完全に空にできなくなること」と定義されている。すなわちDUは内圧・尿流測定により、低圧・低流パターン(排尿時における尿流の低下と、排尿筋圧の低下)により診断される。(著者抄録)

＜Key Points＞◎過活動膀胱(OAB)は尿意切迫感を必須の症状とし、通常頻尿、夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴う場合と伴わない場合がある。◎OABの薬物療法には、抗コリン薬とβ3作動薬がある。◎抗コリン薬は古くから使用されており、その有効性は確立しているが、副作用として口内乾燥、羞明、便秘、排尿困難などがある。◎β3作動薬は比較的新しく開発された薬物であり、抗コリン薬と効果はほぼ同等であるが抗コリン薬のような副作用は少ない。◎難治性OABの治療には電気・磁気刺激などの神経変調療法、およびボツリヌス毒素膀胱壁内注入手術が有用である。(著者抄録)

過活動膀胱(overactive bladder:OAB)の保存療法の中心は行動療法である。これには、生活指導(lifestyle interventions)、膀胱訓練(bladder training)、理学療法(physical therapies)などがある。生活指導には、体重減少、禁煙、食事、便秘治療などがある。膀胱訓練は、尿を我慢させることにより、蓄尿症状を改善させる方法である。広義の膀胱訓練として、定時排尿、排尿習慣法、排尿促進法とあわせて計画療法(scheduled voiding regimens)という。理学療法の中心は骨盤底筋訓練(pelvic floor muscle training:PFMT)である。その他の理学療法として、フィードバック訓練(feedback training:FT)あるいはバイオフィードバック訓練(biofeedback training:BFT)などがある。電気・磁気刺激療法(神経変調療法)は仙骨神経刺激療法を除いて理学療法に含まれるが、一般的には薬物療法による効果不十分の患者に行われる。これらは、非侵襲的であり、OABのみでなく、腹圧性尿失禁(stress urinary incontinence:SUI)などすべての蓄尿障害に効果がみられるので、保存療法の第一選択とすべき治療法である。(著者抄録)

下部尿路症状においては蓄尿症状、排尿症状、排尿後症状(残尿感と排尿後尿滴下)があるが、特に女性では蓄尿症状の頻度が高く、治療の標的として重要である。女性蓄尿症状における主な症状は、過活動膀胱(切迫性尿失禁)と腹圧性尿失禁、および混合性尿失禁である。女性下部尿路症状の行動療法には、生活指導、理学療法(骨盤底筋訓練など)、計画療法(膀胱訓練、定時排尿など)がある。神経変調療法(neuromodulation)とは、膀胱・尿道機能を支配する末梢神経を種々の方法で刺激し、神経機能変調により膀胱・尿道機能の調整を図る治療法と定義され、電気刺激療法と磁気刺激療法が行われる。女性下部尿路症状の治療では、干渉低周波を含む電気刺激療法、磁気刺激療法または仙骨神経刺激療法などがある。(著者抄録)