黒杉 茜, 千葉 哲博, 岩永 光巨, 宇野澤 秀美, 佐久間 崇文, 藤田 尚人, 金山 健剛, 神崎 洋彰, 興梠 慧輔, 小林 和史, 清野 宗一郎, 中川 良, 叶川 直哉, 中村 昌人, 近藤 孝行, 齊藤 朋子, 日下部 裕子, 小笠原 定久, 鈴木 英一郎, 中本 晋吾, 太和田 暁之, 室山 良介, 加藤 順, 横田 元, 神田 達郎, 丸山 紀史, 松原 久裕, 加藤 直也
肝臓 62(10) 656-662 2021年10月
症例は70歳男性.X-12年に肝細胞癌(HCC)を合併し,局所治療と再発を繰り返していた.X-1年に腹部リンパ節転移および肺転移が出現したため,ソラフェニブによる全身化学療法を開始した.しかしその後も病勢は進行し,リンパ節転移巣からの浸潤による高度な十二指腸狭窄を来し,経口摂取不能となった.消化器外科医との緊密な協議と患者に対する十分なインフォームドコンセントを行った上で,腹腔鏡下に胃・小腸バイパス術を施行した.術後経過は良好で,経口摂取が可能となり,自宅退院となった.その後は在宅終末期医療を希望され,約6ヵ月後に原病の進行により死亡した.本症例のように進行期のHCCに起因する消化管閉塞であっても,外科的バイパス術により一定期間のQOLの向上が担保される症例が存在するものと考えられ,病状を十分に考慮した上で,適切な治療を行う必要があるものと考えられた.(著者抄録)