伊藤 大介, 斉藤 雅茂, 宮國 康弘, 近藤 克則
厚生の指標 66(8) 1-8 2019年8月 査読有り
目的 地域組織への参加など高齢者の社会参加は介護予防施策で重視される。市町村介護保険事業計画では,各地域の課題に基づく目標設定と計画作成,取組の評価,評価に基づく計画の見直しが重要とされる。よって,介護予防のための地域の取組の進捗や成果を把握するための指標が求められる。そこで本研究では介護予防に資する地域診断指標の開発に向け,市区町村単位の地域組織参加率につき,要支援・介護認定率(以下,要介護認定率)との関連を地域組織の種類と都市度別に検討し地域診断指標としての妥当性を明らかにした。方法 対象は,Japan Gerontological Evaluation Study(JAGES)プロジェクトの『健康とくらしの調査2016』に参加した39市町につき,政令指定都市を行政区で分割した91市区町である。同調査の188,583人分と行政機関により公開されているデータを市区町単位で集計し分析した。分析は要介護認定率を目的変数とする重回帰分析を行った。説明変数には,ボランティア,趣味関係など8つの種類別の地域組織参加率と単身高齢者世帯割合など計6つの変数を用いた。まず,対象91市区町で説明変数をすべて同時投入し(地域組織参加率は種類別に1つずつ)分析した(分析1)。次に,分析1で関連の示された種類の地域組織参加率につき都市度による相違をみるため,対象91市区町を可住地人口密度の三分位で3群に層別化し分析した。層別化後のサンプルサイズを考慮し,説明変数は地域組織参加率を含む3つに絞り同時投入し分析した(分析2)。結果 対象91市区町による分析1では,ボランティア,趣味関係,スポーツ関係,介護予防・健康づくりの活動の4つの地域組織への参加率(β=-0.49〜-0.23)が要介護認定率と有意な関連を示し(p=<0.05),町内会・自治会(β=-0.18)も関連のある可能性は示された(p<0.10)。都市度で3群に層別化した分析2では,ボランティア(β=-0.27)のように可住地人口密度の高い群でのみ,町内会・自治会(β=-0.34)のように低い群でのみ,スポーツ関係(β=-0.59〜-0.48)などのように2群にまたがり有意な関連を示す地域組織という三様の結果がみられた。いずれも地域組織参加率が高い市区町で要介護認定率は低いという関連であった。結論 ボランティア,趣味関係,スポーツ関係,介護予防・健康づくりの活動など一部の種類の地域組織への参加率は地域診断指標として妥当である可能性が示された。一方,地域組織の種類や都市度により要介護認定率との関連の強さは異なる可能性も示唆された。(著者抄録)