細川 陸也, 友澤 里穂, 尾島 俊之, 明神 大也, 相田 潤, 近藤 克則, 近藤 尚己
厚生の指標 70(11) 22-27 2023年9月
目的 健康日本21(第二次)の目標に「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられている。効果的・効率的な地域の健康づくりや保健活動を目指すPDCAサイクルの推進を図る国民健康保険保険者努力支援制度の事業評価が導入されたが,どのような活動が健康寿命と関連するかは明らかとなっていない。そこで,本研究は,同事業評価の各項目スコアと健康寿命との関連を明らかにすることを目的とした。方法 本研究は,健康寿命の算定の誤差が大きくなる人口1万2千人未満(2020年)の市区町村を除く1,154自治体を分析対象とした。国民健康保険保険者努力支援制度の事業評価に基づき,厚生労働省が公表した2020年度の事業評価スコア集計データを用いた。また,健康日本21の「日常生活に制限のない期間」の考え方に基づき,要介護2以上を不健康な期間とする「日常生活動作が自立している期間」を用いて,男女別に,65歳時の健康な期間の平均を算出し,これを健康寿命として用いた。市区町村の事業評価スコアを説明変数,健康寿命を目的変数,人口密度の対数・財政力指数を調整変数とし,重回帰分析を実施した。結果 男女ともに,特定健診受診率・特定保健指導実施率・メタボリックシンドローム該当者および予備群の減少率(男性:β=0.179,p<0.001,女性:β=0.155,p<0.001),重複・多剤投与者に対する取り組み(男性:β=0.076,p=0.009,女性:β=0.082,p=0.005),保険料収納率の向上(男性:β=0.211,p<0.001,女性:β=0.188,p<0.001),地域包括ケアの推進(男性:β=0.067,p=0.023,女性:β=0.093,p=0.002)の事業評価スコアが高いほど,健康寿命が有意に長い傾向がみられた。また,重症化予防の取り組み(男性:β=0.045,p=0.117,女性:β=0.099,p<0.001),第三者求償の取り組み(男性:β=0.008,p=0.782,女性:β=0.065,p=0.029)の事業評価スコアが高いほど,健康寿命が長い傾向がみられ,女性のみ有意であった。結論 特定健診受診率・特定保健指導実施率・メタボリックシンドローム該当者および予備群の減少率,重症化予防の取り組み,重複・多剤投与者に対する取り組み,保険料収納率の向上,地域包括ケアの推進,第三者求償の取り組みの事業評価スコアは,健康寿命と正の関連がみられた。今後,縦断データや個人データでの因果効果の検証が待たれる。(著者抄録)