高 民定
千葉大学人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 (278) 131-144 2014年2月28日
千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書 第278集 『接触場面における言語使用と言語態度』接触場面の言語管理研究 vol.11 村岡 英裕 編グローバル社会が進むことにより移民をめぐる言語環境も複雑で多様化している.それにより多様な言語背景をもつ移民が参加する接触場面が増えてきており,そこに見られる 移民の言語使用や言語管理も多様化している.こうした傾向は日本に長期滞在する移民にも当てはまり,日本滞在外国人の約3 割を占めているとされる韓国人移民も例外ではない. 同じ言語コミュニティを持つ韓国人移民でも個々人の経験してきた言語環境が異なることにより,彼らの言語使用や言語意識が異なることはすでに先行研究でも指摘されている(生越 2003).多言語環境で暮らす移民たちは自身が向かう接触場面によって言語選択を調整したり,自身の言語を含め,その場の言語使用に対する意識を変えたりすることが報告さ れている(高 2010)が,その決定までの過程はほとんど自動的で,また習慣的に行われることが多い.しかし,そうなるまでに,移民たちは言語選択や使用を繰り返し行っており,言語習慣や言語に対する個人の一定の態度は,自己の言語行動を繰り返し評価し,また管理することによってできた結果であるといえよう.そこで現在の移民に見られる言語習慣 の多様性がどのようにできているかを探るための一つの試みとして,異なる言語背景を持つ韓国人移民の言語習慣と評価を調べ,言語背景が異なることによってそこにどのような 違いが見られるかを考察する.本研究は言語背景が異なる二人の韓国人移民のケーススタディーから,移民の現在の言語使用に見られる意識と評価の多様性が,彼らがおかれていた言語背景のタイプと深く関係していることを検証する.またそれは彼ら自身がこれまで行っ