壷内 晃介, 齊藤 一幸, 高橋 応明, 伊藤 公一, 露口 利夫, 山口 武人, 加藤 佳瑞紀
日本ハイパーサーミア学会誌 = Japanese journal of hyperthermic oncology 26(4) 121-130 2010年12月20日
胆管癌に対する治療方法の一つとして, 内視鏡とマイクロ波アンテナを併用した温熱療法が挙げられる. この治療では, 内視鏡鉗子口を利用することによって, ファーター乳頭から胆管までアンテナを非侵襲で誘導し, 患部の局所加温を行う. アンテナは柔軟性のある同軸ケーブルによって製作されており, 先端部に設置されたスロット部からマイクロ波エネルギーが照射される. 筆者らはこれまで, 摘出臓器を利用してアンテナの加温性能を評価してきた. そこで, 本論文では, アンテナの臨床使用に向けて, その効果や安全性を検証するために, ブタを用いた動物実験を実施し, アンテナの操作性や堅牢性に加え, 血流存在下において胆管部の組織を凝固させることなく42°Cまで上昇できるか否かを検証した. 本実験では, アンテナを十二指腸から胆管に向かって侵襲的に刺入し, その後, スロット部と温度測定点が離れすぎないように, X線画像によってアンテナと温度センサの位置を調整した. そして, 動物実験の結果, アンテナへの入力電力を15 W, マイクロ波の給電間隔をオン : 20 s, オフ : 5 sとした際に, 胆管部の組織を凝固させることなく30分間42°Cに保つことができた. なお, 実験終了後にスロット部から温度測定点までの距離を算出したところ, 4.8 mm離れていたことが分かった. さらに, この間アンテナは故障することなく正常に動作したため, アンテナは温熱療法に利用可能であると考えられる. また, 電磁界解析および温度解析を行ったところ, 血液流量率を2.33×10-5 m3/kg•sとしたとき, 解析結果が実験結果と概ね一致した. この血液流量率の値は, 文献値と大差ないため, 妥当な結果と考えられる. そのため, 本解析モデルは, 今後, 効果的なアンテナ構造や治療方法を検討していく上で有効であると考えられる.