八幡茂木, 三輪正幸, 松井弘之
園芸学研究 5(2) 157-164 2006年 査読有り
'田中'由来の三倍体ビワを用いてビワ無種子果を作出するため,GA_3およびCPPUの処理回数,濃度および処理時期について検討した.200ppm GA_3と20ppm CPPUとの混用液に,開花7日前~開花初期とその27~58日後の計2回,花(果)房を浸漬処理することによって,果形が縦長であるが完全な無種子で'田中'(二倍体有種子果)と同等の大きさの果実が得られた.しかし,糖含量は年次変動によって二倍体有種子果より低い場合があった.三倍体無種子果のがく片の大きさおよびがく孔の内径は二倍体有種子果の約2倍に拡大し,果心部の子室に直径1cm強の空洞が生じたが,その容積は果実全体の容積の7%であった.果肉は赤道部で二倍体有種子果の約2倍厚くなり,重量割合で約20%増加したことから,三倍体無種子果の可食率は90%となった.三倍体無種子果の果肉の肥大は,GA_3およびCPPUによって細胞数の増加と細胞の肥大が促進されたためと考えられた.