沖津 奈緒, 朝倉 隆司
日本健康相談活動学会誌 19(2) 37-49 2024年
目的
日本における不登校生の母親の経験に関する質的研究のスコーピングレビューによって、先行研究の知見を段階性と関係性の視点から整理し、成長のプロセスとして構成し、今後の研究的課題を明らかにすることを目的とした。
方法
スコーピングレビューの手法を用い、PRISMA-ScRに基づいて論文を検索した。1990年から2022年までの期間に限定し、日本国内の質的研究の論文を医中誌webとCiNiiで検索した。対象となった論文を概観した上で、その知見をテーマ分析によって段階性と関係性の2つの視点から整理した。
結果
17件の論文が分析の対象となった。研究領域は心理学領域、調査対象者は自助会参加者が最多であった。査読付論文は少なく、分析方法が明記されていない論文が多かった。
対象論文の知見を段階性と関係性の視点から整理したところ、成長のプロセスの段階性を示す【関係性の喪失】【認識や行動の転換と葛藤】【関係性の再構築】の3つのテーマと、関係性を示す【不登校事象】【自己】【わが子】【家族及び周囲】の4つのテーマが抽出された。
考察
不登校生の母親の成長のプロセスをパーソナルリカバリーの視点から捉えることにより、その体験をより深く理解できる可能性が示唆された。今後の研究的課題として、①系統的な手法による研究の蓄積、②社会的支援を受けていない母親や母子世帯の母親を対象とした調査の実施、③【認識や行動の転換と葛藤】の段階から【関係性の再構築】の段階への移行の機序の解明、④関係性同士の関連や経時的変化の解明を指摘した。更なる理論的発展に向けて、これらの研究的課題に取り組むことが望まれる。