松本 亜由美, 川名部 美代子, 山口 ふじ子, 藤生 智子, 清水 裕子, 中村 栄子, 村田 章子, 柏熊 光子, 宮崎 美砂子
保健師ジャーナル 69(2) 130-138 2013年2月
本調査は,「部門を越えた保健師の連携のあり方」および「連携を実質化する条件」,そのための「統括的な保健師の役割」を明らかにすることを目的とした。調査の実施主体は千葉県市町村保健活動連絡協議会である。調査対象を千葉県内全54市町村とし,各市町村の統括的な立場の保健師と分散配置部門ごとの保健師に内容別の自記式アンケートを郵送法で実施し,48市町村より回答を得た。その結果,部門を越えた連携には,個別事例をとおした情報共有にとどまらず,市町村単位で地域全体の課題を解決することを前提に情報を共有すること,あるいはその場として機能することが必要であると考えられた。そして,その連携が実質化するためには,部門を越えた連携の場が組織的に認められ,その場において共通するゴールの明確化とそれぞれの立場での目標の確認,平等に情報が得られることが必要となると考えられた。これらの連携の場が組織の中で位置づくためには,統括的な立場の保健師の役割が必要であることが明らかになった。役割の内容は,1つには,保健師の専門性とは生活を広い視野でとらえて対応することにあり,専門性をより発揮するために部門を越えた連携が必要となることを組織内に説明し,理解を浸透させる役割である。2つめは,職能としての専門性を基盤に置き,保健師間の共通認識が得られるよう働きかけることであり,連携の場を設定する際は,職能の根幹に関わる共通認識の醸成を意識しながら場を設定していく役割があると考えられた。(著者抄録)