平沢 累

当院で2012～2021年に牽引手術台を用いてDAA-THAを施行した906例(うち初回THA 870例、再置換術36例)の脱臼率と危険因子について検討した。危険因子の候補は「股関節手術歴」「股関節の原疾患(OA/ONFH/外傷/高位脱臼)」「性別」「神経筋疾患の併存」「骨頭径」「Crowe分類」とし、ロジスティック回帰分析を行った。脱臼率は全体で2.2%、初回THA群では1.8%、再置換術群では11.1%であった。有意な危険因子として「股関節手術歴」「股関節の原疾患(ONFHまたは外傷)」「神経筋疾患の併存」が抽出された。

65歳以上の患者にTaperloc systemを用いてTHAまたはBHAを施行し術後1年以上観察できた83例を対象とし、使用ステム別にMicroplasty stem群47例(M群)とStandard stem群36例(S群)に分け、術後のX線所見を比較検討した。結果、Malalignment はM群のほうが多く、Stress shielding はS群のほうが重度であった。Reactive lineはM群で43%、S群で59%に認めたが、ステム固定性(Enghの分類)は両群とも全例がStableと良好であった。

内側半月板後根断裂(MMPRT:medial meniscus posterior root tear)は内側半月板逸脱をきたし、膝関節軟骨の接触圧を増加させる疾患である。軽微な外傷で受傷し、受傷時に膝後内側部痛とpop音を聴取することが特徴であり、MRI検査でgiraffe neck sign等の特徴的な所見を認める。短期間での変形性膝関節症の進行や特発性膝関節骨壊死の発生が危惧されるため、早期診断と適切な治療が必要とされる。今回我々は従来のmulti-useガイドより骨孔作成を容易にするMMPRTガイドを用いて脛骨骨孔を作成し、経脛骨pull out修復術を施行した3例3膝の短期成績を評価した。内側逸脱量の進行を認めた症例で骨孔の作成位置が本来の骨孔位置に対して前方で作成されていた。変形性膝関節症の進行抑制につながる内側半月板逸脱の改善には骨孔を適切な位置に作成することが重要と考えられた。(著者抄録)

【背景】近年、半月板損傷に対する縫合適応の拡大やデバイスの進歩と共に半月板横断裂(RT)に対しても縫合が行われるようになってきた。術式は一般的にinside-outで行われるが、皮膚切開の必要や神経損傷の危険がある。【目的】外側半月板横断裂(LMRT)に対してall-insideで新しい縫合術を行ったので報告する。【方法】対象は3例3膝で、男性1膝、女性2膝、手術時年齢は平均23歳(15～37歳)であった。LMRT(中節～後節)に対して、Arthrex社Knee Scorpionを用いてall-insideで縫合を行った。まず横断裂部両端にそれぞれ1本の垂直縫合を施行した。その後に、垂直縫合を足掛かりにして断裂部を1本の糸で8の字型に縫合した。【結果】全症例で断裂部は良好に引き寄せられた。1症例では術後1年で再鏡視を行い、断裂部の完全治癒を認めた。【結論】LMRTに対する新しい縫合術を報告した。今後、再鏡視による評価は必須であるが、強固な初期固定力があり外側半月板の可動性も残すことができる有用な縫合方法と考えられる。(著者抄録)

軟骨全層損傷はスポーツに関連して発症することが多く、比較的稀な疾患である。軟骨全層損傷に対する治療法はいまだ議論の余地がある。我々は大腿骨内側顆に生じた軟骨全層損傷に対し、軟骨片固定術を施行し、良好な治療経過であった1例を経験したので報告する。症例は13歳男性。サッカーで膝を捻り受傷。左膝痛と屈曲障害を主訴に当院紹介受診。MRIにて20×18mmの軟骨損傷を認めた。左大腿骨内側顆軟骨損傷の診断となり、吸収ピンと骨釘による軟骨片固定を施行した。術後6ヵ月の関節鏡所見では生着した軟骨片を確認。術後1年のMRIでは周囲の軟骨と信号変化が均一となり、軟骨片の生着と判断した。KOOSも満点であり、可動域制限もなく、サッカー競技に復帰している。軟骨全損損傷の軟骨片固定の報告は少ないが、大腿骨内側顆荷重面への軟骨片固定術により良好な成績を得られた。(著者抄録)

56歳女性。右大腿外側部痛を主訴に保存的治療を受けるも改善せず、精査加療目的で今回、当科へ紹介となった。MRI、CT所見より、嚢腫全体の石灰化を呈した腰椎椎間関節嚢腫と診断され、骨形成的右L5片側椎弓切除による嚢腫の摘出を試みた。しかし、嚢腫壁は脆く一塊としての摘出が困難であったため、嚢腫内にネラトンカテーテルを挿入し、石灰化した内容物の流出が止まるまで繰り返し洗浄した。その結果、病理組織学的に椎間関節嚢腫であり、術後は下肢のしびれが軽快した。術後3ヵ月時点でのCTでは再発所見はみられず、石灰化組織はほぼ吸収されていた。