高山俊昭, 佐藤時幸, 亀尾浩司, 後藤登美子
第四紀研究 34(3) 157-170 1995年
北大西洋の第四系深海底堆積物の中に,13の石灰質ナンノ化石基準面が認定され,その地質年代も地磁気層序との対応から算出された(Takayama and Sato, 1987).この基準面は,赤道太平洋やインド洋の深海底堆積物,およびわが国の上部新生界の中にも確認される.その結果,第四系の認定と相互の対比,および10万年オーダーでの地質年代の決定が可能になった.本論では,その成果の概略を紹介し,あわせて基準面の有効性について,化石の同定に関する個人差,基準面の同時性,研究者によって異なる基準面の年代値といったさまざまな問題点からこれを検証した.一方,鮮新統/更新統境界の模式地である南イタリア,ヴリカ(Vrica)のセクションにおける石灰質ナンノ化石層序を検討したところ,基準面のうちの4つが確認された.鮮新統/更新統境界は,筆者らの基準面(12)(Gephyrocapsa caribbeanicaの出現:図7参照)に近く,その年代を基準面の位置とCande and Kent (1992)の古地磁気年代尺度を基礎に求めたところ,1.74Maとなった.