山下 修一
理科教育学研究 51(3) 145-157 2011年3月10日 査読有り
本研究では,高等学校で物理Iを選択した理科系大学生31名と選択しなかった文科系大学生130名,「光の性質」を学んだ直後の中学校1年生43名を対象にして,まず,どの程度凸レンズを通る光の作図がきるのか,作図の意味がわかっているのかについて調査した。そして,作図について解説した読み物を通じて,どの程度作図の意味がわかるようになり,獲得した知識を用いて発展的な課題に回答できるようになったのかについても調査した。その結果,凸レンズを通る光の作図については,解説を読む前でも,理科系学生(実像:97%,虚像:90%)・中学生(実像:81%,虚像:70%)は,2本以上の光路を描いて正しい作図ができていた。作図の意味については,解説を読む前には理科系学生・文科系学生ともに,作図はできても意味まではわかっていないという傾向が見られた。解説を読んだ後には,文科系学生でも実像(96%)・虚像(95%)についての作図ができるようになり,作図ができて意味もわかるという状態になっていた。また,凸レンズを半分隠した場合の実像の作図には,理科系学生84%・文科系学生65%が正答でき,顕微鏡の見え方を問う課題についても,文科系学生でも40%が十分な説明をするようになっていた。中学生の場合には,解説を読み進めながら新たな知識を獲得するのが困難で,発展的課題にはうまく回答できなかった。