喜多 敏明, 伊藤 隆, 嶋田 豊, 柴原 直利, 寺澤 捷年
日本東洋医学雑誌 49(3) 441-448 1998年
不定愁訴患者に随証的漢方治療を行う前に, Cornell Medical Index(CMI)の精神的愁訴51問(6カテゴリー)と阿部の自律神経失調症の問診票の身体的愁訴43問(7カテゴリー)を施行した。CMIの領域がIIIあるいはIVで, 柴胡加竜骨牡蛎湯または加味逍遥散が有効であった18例を本研究の対象とした。内訳は, 柴胡加竜骨牡蛎湯有効例が9例(柴竜湯群), 加味逍遥散有効例が9例(加味逍群)であった。両群の臨床像を比較するために, 精神的ならびに身体的愁訴の各カテゴリーに対する平均訴え率を群別に検討した。精神的には, 抑うつと緊張に関する平均訴え率が柴竜湯群で高く, 過敏と怒りに関する平均訴え率は加味逍群で高かった。判別分析の結果, 緊張・過敏・抑うつの3カテゴリーが両群の判別に寄与することが明らかとなった。身体的には, 7つのカテゴリー全ての平均訴え率において群間に大きな差がなかった。