有田 龍太郎, 神 久和, 草野 源次郎, 秋葉 秀一郎, 渡辺 均, 高山 真, 三谷 和男, 三潴 忠道
日本東洋医学雑誌 73(4) 463-474 2022年10月
国内で使用される生薬の9割を輸入に頼る日本では,近年になり生薬の国内生産が推進されている。2021年8月に第71回学術総会が東北支部主幹で開催された際,特別企画として東北地方における薬用植物栽培と生薬生産の歴史と現況について調査報告を行った。東北地方で薬用植物栽培が拡大したのは江戸時代享保年間以降で,会津のオタネニンジン,出羽のベニバナなどが栽培に成功し全国に流通した。現代の調査では,栽培を伝承し地域振興に活用したり,全く新たに栽培を開始した地域・品目もみられた。栽培事業を継続・拡大するため産官学による連携体制が形成されていた。また,生薬だけでなく,食品・化粧品・織物にも販路を拡大する模索が行われていた。生薬としての流通には多くの課題が残るが,本調査で東北各地での薬用植物栽培の工夫を明らかにすることができた。本調査結果は動画として学会会員専用ホームページにて公開されている。(著者抄録)