宮本亘, 齊藤一幸, 吉村博幸, 伊藤公一, 青柳裕, 堀田洋稔
電子情報通信学会技術研究報告 103(706) 1-6 2004年3月
近年,マイクロ波の非通信分野への応用が注目されている.特に医療分野への応用について活発に研究されており,がんの温熱療法(ハイパサーミア)はその一例である.筆者らは,同軸スロットアンテナを用いた組織内加温療法について検討を行ってきた.マイクロ波組織内加温法は,腫瘍のみを高い温度で加温可能な治療法であり,治療成績の向上が期待できる手法である.本報告では,本アンテナを用いた臨床応用より得られたデータ(治療終了直後の患部における温度推移)を用いて,生体熱輸送方程式から患部の血流量解析を行った.さらに,ここで算出した血流量を用いて,この臨床を模擬した計算機シミュレーションにより,患部周辺の温度推移の検討を行った.ここで,このシミュレーション結果は,臨床時の測温データと大差のないことが確認できたため,本手法は治療計画の策定に有効であると考えられる.