中山節子, 伊藤葉子, 古重奈央, 鎌野育代, 真田知恵子, 岩田美保
千葉大学教育学部研究紀要 61 203-210 2013年3月
本稿は,幼・小・中・高校・大学それぞれの「ESDに関する発達段階」の基礎資料を得るために,写真投影法を用いて収集した資料分析とその考察を行うことを目的とするものである。調査対象者は,幼稚園年長組,小学校2年生,小学校5年生,小学校6年生,中学校2年生,高等学校2年生,大学2年生である。それぞれの発達段階の調査対象者に,ESDに関連するキーワードを指定して,そのキーワードに関する写真に撮る写真投影法を実施した。収集した写真を撮影されている内容を撮影した理由と照らし合わせながら,写真の分類と数量化を行った。写真は,10の分類:①自然や生き物②エコ③エネルギー④関係性⑤教育文化⑥経済・開発⑦公正・倫理・平和 ⑧安全 ⑨持続不可能⑩その他に大きく括ることができた。写真投影法の結果分析から,低年齢では自然や自分たちの日常生活の中にも持続可能性を感じているが,年齢が上がるにつれエコのための様々な装置や道具に集約されていく傾向があることが明らかとなった。また,他の発達段階の幼児,児童,生徒の写真を共有している高校2年生の反応から異世代のESDに関する発達段階を知ることは,自分達が忘れていた視点を発見することができるとともに,大人の視点に移行しつつある自分達の成長も確認できる利点が見受けられ,教育的効果があることも推察された。