岩田美保
発達心理学研究 10(2) 110-124 1999年11月 査読有り
本研究では, 幼児の内的状態を表す言葉の獲得と弟の意図のくみとりとの関連について調べた。月齢21カ月の1名の男児と誕生したばかりの弟について17カ月間家庭において縦断的に自然観察を行い, ピデオに記録した。データについては2つの分析が行われた。第一に, 幼児の弟及び自己についての内的状態語についての発話を調べた。第二に, 幼児における弟の意図のくみとりの発達的変化を調べるために, 幼児の弟についての意図への言及や, その文脈が示されているエピソードを分析した。これらの分析によって心的な言及の発達の重要な側面が明らかになった。内的状態語のうち心的状態語, 特に「知っている」のような心的動詞が自己および弟についての双方に発現するのは, 対象児が32カ月の時点であり, 37カ月時に増加していることがわかった。そのような心的状態語が発現する時期は, 弟の意図を的確に把握し, また, より洗練されたやり方で予測することが可能になる時期とはぼ同時期であることがわかった。総じて, これらの結果により, 幼児の自己及び弟についての心的動詞の獲得が, 弟の意図の洗練されたくみとりと強く関連していることが示唆された。