清水 馨
経済研究 = Economic journal of Chiba University 29(3) 283-300 2014年12月
2013年,経済産業省は世界的に活躍する日本の中堅企業をグローバルニッチトップ(GNT)企業として選定した。2014年,米国GEキャピタル社の支援を受け「中堅企業研究会」が立ち上がった。メンバーは株式会社タニタ社長谷田千里氏,日本貿易振興機構(ジェトロ)顧問林康夫氏,一橋大学沼上幹教授など,産官学の強力な体制が整っている。中堅企業がにわかに注目を集めてきたことは,細々と続けてきた研究者として,非常に喜ばしく思う。ただし,経済産業省が選定したGNT企業だけを研究対象とする研究者の姿勢は,やや安易であろう。中堅企業研究会の研究ベースが大企業研究であり,超優良中堅企業だけ事例研究する方法論的課題が改善されれば,目覚しい貢献が期待される。一時のブームで終わらせてはいけない。一方で,2014年に刊行された企業家研究フォーラム編集の『企業家学のすすめ』を拝誦した1)。経営学,経済史,経営史の第一人者ら精鋭執筆陣による35のテーマで構成されており,現時点での最先端の幅広い知見を得ることができる。500ページあまりの紙幅に多数のテーマを詰め込むことによる諸制限は理解するが,研究対象,研究テーマ,方法論に偏りがあると思われる。 本論文の目的は,中堅企業の成長要因を,過去の経営者のインタビュー調査と現在の業績を見比べることから抽出し,新たな理論を構築 することである。経営者の考え方,意思決定の内容が将来の業績に影響を及ぼすと考えれば,業績が明らかになる前に調査を行わなければならない。しかし,従来の研究は,既に高業績になっている企業や華々しい企業の経営者の行動や意思決定に焦…小柏喜久夫先生退職記念号欧文抄録: p.149