大渕 朝日, 楯 真一, 松岡 歩, 錦見 恭子, 羽生 裕二, 碓井 宏和, 三橋 暁, 生水 真紀夫
関東連合産科婦人科学会誌 57(4) 615-621 2020年11月
原発性卵巣腫瘍と転移性卵巣腫瘍では治療法や予後が異なるため鑑別が重要であるが,術前診断に苦慮する.今回,多房性嚢胞性腫瘍を呈した転移性卵巣腫瘍を2例経験した.症例1:81歳女性.X年6月に肝内胆管癌(高分化腺癌,Stage II)の手術を受けた.術後化学療法中のX+1年4月下腹部膨隆感があり,両側卵巣に多房性嚢胞性腫瘍を指摘され,当科紹介となった.MRI検査で粘液性腺腫が疑われ,腹腔鏡補助下両側付属器切除術を施行した.術後病理診断は肝内胆管癌の卵巣転移であった.症例2:37歳女性.Y年3月に肝内胆管癌(中〜高分化型腺癌,Stage IV)の手術を受けた.術後化学療法後,経過観察されていた.Y+1年6月に下腹部痛のため近医を受診し,卵巣嚢腫を指摘され当科紹介となった.超音波検査で両側卵巣に多房性嚢胞性腫瘤を認め粘液性腺腫を疑った.子宮頸部細胞診でAGCを検出したため,頸部と内膜組織診を施行し高分化型腺癌を検出した.肝内胆管癌の転移を疑い,子宮全摘+両側付属器切除術を施行した.術後病理診断は肝内胆管癌の卵巣・子宮転移であった.今回の2例のように,肝内胆管癌の卵巣転移は多房性嚢胞性腫瘍を呈する可能性があるため,肝内胆管癌既往の多房性卵巣腫瘍症例では,再発や転移の可能性を念頭におく必要があると考えられた.(著者抄録)