近藤昭彦, 建石隆太郎, RUNTUNUWU E, PARK J‐G
Journal of Japan Society of Hydrology and Water Resources 15(2) 128-138 2002年
NOAA/AVHRRによってモニタリングされている地球陸域の植生の活動の年々変動と気候変動および大気CO2濃度変動の間の関係について検討を行った.その結果,地域によって関係は異なるが,NDVI変動で表される植生活動の年々変動が気温および降水量の変動と対応する地域があることが明らかとなった.北半球では気温に対応する地域が広く認められ,南半球では降水量と対応する地域が多い.また,NDVIの変動,特に北半球における変動の正偏差は年平均大気CO2濃度の正偏差ともよく一致することを示した.一方,アラスカ,バローにおける年間の大気CO2濃度の振幅はΣNDVIの年々変動と極めて強く同期し,最も温暖であった1990年には植生の成長期である6月,7月に大気CO2濃度が前年同月より減少した.このことは植生の生育,大気中のCO2濃度,気候変動の間には明瞭な因果関係あるいは相互作用が存在する事を示唆すると同時に,NDVIの増加で表される植生活動の活発化は全球的な大気CO2濃度の増加に対応する年スケールの現象と,植生の生育初期におけるCO2の吸収,大気CO2濃度の一時的減少で表される地域における季節変動という二つの異なるスケールの現象が重なっていることも意味している.