上地雄一郎, 宮下一博
パーソナリティ研究 14(1) 80-91 2005年
本研究の目的は,Kohutの自己心理学の視点から自己愛的脆弱性を測定する尺度を作成することであった.自己愛的脆弱性は,承認・賞賛への過敏さ,潜在的特権意識,自己顕示抑制,自己緩和不全,目的感の希薄さという5つの指標を通して測定できると想定した.用意された52項目を因子分析した結果,上記の指標に相当する因子が確認された.因子分析により選択された40項目が5つの下位尺度に分類され,これらの全体が自己愛的脆弱性尺度(Narcissistic Vulnerability Scale: NVS)と命名された.NVSで測定される自己愛的脆弱性は,過敏型の自己愛と正の相関を示した.NVSの全下位尺度において,高得点者は低得点者よりも高い不安やうつ傾向を示した.精神症状をもつ患者は,NVSの全下位尺度において健常者より高い得点を示した.