鳥谷部 真一, 戸田 由美子, 田口 由美子, 松村 由美, 長島 久, 小松 康宏, 相馬 孝博
医療の質・安全学会誌 16(2) 160-169 2021年4月
目的:国立大学附属病院医療安全管理協議会教育委員会は,国立大学の医療系学生の2018年度の医療安全教育の実態を明らかにするために,全国の国立大学を対象にアンケート調査を行った.方法:全国の国立大学医学部附属病院の医療安全管理部門に調査票を送付し,各大学に調査への協力を依頼した.調査結果を2011年度の調査結果と比較するとともに,学部・学科(医学科生,看護学生,歯学部生)間で比較した.結果:46大学に送付し,34大学から回答を得た(回収率73.9%).授業時間および授業内容は大学間で大きく異なっており,大学間で標準化が進んでいない現状がうかがえた.授業形態は各学部・学科とも,実習が10~30%程度であり,講義を主体としていた.学部・学科間で,授業時間や授業内容には差異があった.全体としてみると,WHO患者安全カリキュラムガイドの11トピック(WHO項目)のうち授業で取り上げられていたのは中央値で7項目,日本特有の10項目(Japan項目)のうち中央値で4項目だった.病院の医療安全管理部門が関与する授業は全体の半数以下だった.以上の結果は2011年の前回調査から大きな変化はなかった.結論:国立大学における医療安全教育は量も内容も十分とは言えず,大学間で大きな差異があった.こうした状況は2011年から大きな変化はなかった.WHO項目とJapan項目は日本における医療安全教育では必須の学習項目であると考えられるが,授業で取り上げられていない項目が存在した.各項目の教育内容を具体化・明確化する必要があり,そのためには,モデル・コア・カリキュラム策定に医療安全の専門家が参画すべきと考えられた.(著者抄録)