藤崎 美久, 伊豫 雅臣, 橋本 謙二
千葉医学雑誌 82(3) 163-169 2006年6月1日
千葉県内の精神科医212人に対して郵送法にて司法精神医学に関する調査を行った。回答者は88名であり,回答率は42%であった。このうち精神鑑定経験者数は38名(43%)であり,刑事精神鑑定(正式鑑定または嘱託鑑定,以下本鑑定)経験者は28名で,簡易鑑定経験者は26名であった。本鑑定経験数は1から50回,簡易鑑定経験数は1から105回であり,両者ともとばらつきが大きく,一部の鑑定人が多数の鑑定をこなしていることが示めされた。国際疾病分類(ICD-10 精神および行動の障害)や精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)に比べ,従来診断法が73%(本鑑定),52%(簡易鑑定)と多かった。措置入院治療は55%の回答者が経験していた。治療目標は幻覚妄想85%,衝動制御65%,服薬遵守50%,反社会的行動46%,病識を持たせることが44%,希死念慮の改善が25%であった。この治療目標の達成度は,それぞれ75%,71%,71%,63%,50%,そして82%であった。治療法としては,薬物療法は100%用いられており,電気ショック療法も21%で用いられていた。精神療法としては洞察的精神療法が25%,行動療法や認知行動療法等の指示的精神療法が38%であった。退院後の処遇として,保健所や訪問看護を用いない,一般外来のみの場合が52%であった。また,刑事鑑定についてトレーニングとしては,鑑定助手(トレーニングを受けた中での割合82%),アドバイス(75%)によるものが多く,系統的な研修の必要性が示唆された。トレーニング受講は全回答者88名中48名(55%)が希望していた。 以上より,精神鑑定における診断方法についての統一化や新しい治療法の導入,そしてそれらについての系統的