松下 一之, 坂本 昭雄, 碓井 貞仁, 朱 踪杰, 高石 聡, 鍋谷 圭宏, 尾崎 正彦, 唐司 則之, 奥山 和明, 小野田 昌一, 磯野 可一
日本消化器外科学会雑誌 23(1) 75-79 1990年2月1日
症例は65歳, 女性. 1988年7月, 胃粘膜下腫瘍の診断のもと開腹し, 胃体上部前壁に胃外有茎性腫瘤を認め, 術中迅速組織検査にて胃平滑筋芽細胞腫と診断され, 胃部分切除を施行した. 腫瘍の切除標本の大きさは, 3.5×2.5cmで一部に出血を伴っていた. 組織学的には, ヘマトキシリンーエオジン染色では, 核は異型性に乏しく, 核周囲に透明帯を有し, 胞体は好酸性であり, 鍍銀染色では, 一部にalveolar patternが認められた. 電子顕微鏡像ではdense patchを認め, 本腫瘍が平滑筋由来であることが示唆された. 今回集計しえた本邦における胃平滑筋芽細胞腫228例について検討したところ, 最大腫瘍径が5cm未満では手術時に転移, 直接浸潤を認めず, また予後の明らかな69例の10年生存率は88.8%であり, この内手術時に転移, 他臓器直接浸潤を示した13例の予後は5年生存率が71.3%, 10年生存率が47.5%であった.