研究者業績

植田 憲

ウエダ アキラ  (Akira Ueda)

基本情報

所属
千葉大学 デザイン・リサーチ・インスティテュート 教授
学位
博士(学術)(千葉大学)
修士(学術)(千葉大学)

J-GLOBAL ID
200901078554451516
researchmap会員ID
5000043186

外部リンク

論文

 101
  • Weichen CHANG, Shyh-Huei HWANG, Akira UEDA, Kiyoshi MIYAZAKI
    BULLETIN OF JAPANESE SOCIETY FOR THE SCIENCE OF DESIGN 63(1) 21-30 2016年5月  査読有り
  • 楊 洋, 植田 憲
    デザイン学研究 61(6) 65-74 2015年3月  査読有り最終著者
    本稿は,中国湖南省江永県地域における伝統的な針仕事を取り上げ,その文化の特質を考究することを目的としたものである。文献調査ならびに現地における聞き取り調査や,針仕事によって制作された128点の資料を対象として考察を行った。その結果,以下の知見を得た。(1)江永県地域における刺繍紋様のモチーフには,身近な生活環境に存在するものが多く利用されていた。(2)江永県地域の刺繍紋様には,身の回りの動植物や風景の他にも仙人や想像上の生物などがあり,現実世界に制限されない地域特有の世界観が共有・継承されていた。(3)江永県地域の刺繍紋様は,制作技術のみならず,地域にまつわる偉人や女書などのさまざまな知識の伝承の媒体として機能していた。(4)江永県地域の針仕事は,日常生活・非日常生活を維持・継承させていくための重要な役割を担っていた。(5)江永県地域の針仕事によってつくられたものは,単に実用品だけでなく,意匠やでき具合を通して,女性の教養や気持ちを表現しつつ,地域のコミュニケーションを促進する需要な役割を有していた。
  • 楊 洋, 植田 憲
    デザイン学研究 61(6) 75-84 2015年3月  査読有り最終著者
    本稿は,中国湖南省江永県地域において,女性の間のみで共有された女書の文化的・社会的役割を明らかにすることを目的としたものである。調査・考察の結果,以下の知見を得た。(1)女書の詩文は以下の5つに分類することができた:(A)契りを交わした血の繋がりのない女性の間の楽しみを描写したもの,(B)日常生活における消極的な思いを吐露したもの,(C)災難や不幸を乗り越える行事や儀礼を詠ったもの,(D)日常生活の厳しさを吐露したもの,(E)女徳に関する教育・教養を涵養したもの。(2)女性たちは,幼い頃から,煤や木片などの身の回りの材を道具として積極的に女書の習得・上達に勤しんだ。(3)姉妹の契りを交わした女性たちは,女書を通して,悲しみや喜びを吐露し励まし合い当該地域で生きる活力を獲得した。(4)女書は,当該地域のハレの日を知らしめる手段であった。(5)女書は,封建社会に生きる女性たちの道徳教育の媒体,ものづくりの図案の教本,家や世代を超えた文化伝承の媒体であった。
  • 陳香延, 植田憲
    デザイン学研究 61(2) 85-94 2014年9月  査読有り最終著者
    大甲藺工芸は,台湾中西部の大安渓流域に自生する特有の藺草の一種である大甲藺を素材として,当該地域で制作され使用されてきた生活工芸である。当該地域の人びとによって,大甲藺が発見され,それを素材とした大甲蓆がつくられてからの歴史のなかで,大甲帽子,煙草入れなどのさまざまな生活用具が制作され,産業としての繁栄を遂げるに至った。文献調査,現地調査に基づき,以下の結論を得た。(1)大甲藺工芸の発展の礎は,台湾大甲地域の人びとの生活のなかで,大甲藺という材料が発見され,その利活用方法のみならず,より良質な材料をつくり出すための工夫が,人びとの手でさまざまになされたことにある。(2)大甲藺工芸は,当該地域の人びとの生活のなかで全体活用が徹底されるなど,生活との密接な関連のなかで発展してきた,まさに当該地域の生活文化を代表する存在である。(3)大甲藺工芸は,当該地域の人びとを結びつける重要な媒体であった。
  • 劉俊哲, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 59(3) 103-112 2012年11月  査読有り
    本稿は、中国・南京に伝わる伝統的な灯籠である「秦淮灯彩」を取り上げ、当該地域の人びとの暮らしが描かれた近代以前の絵画資料と文学作品を手掛かりとしながら、「秦淮灯彩」の意匠的特質を明らかにするとともに、その社会的・文化的役割を導出することを目的とした。考察の結果、以下の知見を得た。1)「秦淮灯彩」は、人びと同士を結び付ける媒体であった。「秦淮灯彩」に関するさまざまな活動は、地域の人びとが総出で行ったことから、当該地域の人びとの絆を構築する役割を担っていた。2)「秦淮灯彩」は、人と自然、人と天とを結び付ける媒体であった。その役割は、中国古来からの自然哲学や「天人合一」といった思想の体現であり、自らと身の周りの自然、あるいは神との結びつきを確かめる大切な機会を人びとに与えることとなった。3)「秦淮灯彩」は、広告等や、身分を知らしめるための道具として、日常生活においても使用された。4)「秦淮灯彩」は、ハレの空間を演出するための道具として使用された。総じて、「秦淮灯彩」の文化は、まさに当該地域の人びとの人生観や倫理観を育んできた自然哲学や天人合一に基づく精神世界に関わるさまざまな「もの」「こと」と深く結び付いて構築されてきたものであった。
  • 劉俊哲, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 59(3) 93-102 2012年11月  査読有り
    本稿は、中国の南京に伝わる伝統的な「秦淮灯彩」の歴史の源流、変遷、沿革と歴史の諸相を考察したものである。特に、「秦淮灯会」活動を明確に記載した文献の調査を通して、南北朝時代から清末、民国までの歴史を回顧した。その結果、以下の知見が得られた。<br>(1)古くから「秦淮灯会」は、「秦淮灯彩」を用いながら一連の具体的な活動を通して長期間に当該地域の活性化に果たす役割がある。<br>(2)「秦淮灯彩」をはじめ、当該地域に盛んになった手工業から生み出した伝統的な生活文化は、人びとが地域のなり立ちを確認する重要な契機を提供していた。<br>(3)「秦淮灯彩」は身分、年齢、性別を問わず、当該地域の人びとに共有された。そのため、「秦淮灯彩」のあった姿を明らかにすることは、人間関係、調和社会の構築を強調している中国には、現実的な意義がある。<br>(4)近年では、機器導入するによる、量産が多くなされるととに、「秦淮灯彩」の質と意匠の低下が激しい現状を迎えている。今後、伝統的なものづくりを、いかに継承していくかが大きな課題となっているといえよう。
  • 朱寧嘉, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 59(1) 39-48 2012年7月  査読有り
  • 朱寧嘉, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 58(6) 69-78 2012年5月  査読有り
  • 大鋸智, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 58(1) 31-40 2011年5月  査読有り
    本研究は、江戸期の会津地域の農家によって行われていた資源循環型生活の実相を明らかにすることを目的とした文献研究である。今後の資源循環型生活構築に資する特質を見出すことを目指した。本研究において用いたのは、佐瀬与次右衛門が1684年に著した農業指南書『会津農書』である。本書からは、(1)自然の様子を観察し、その変化から季節の移り変わりやその年の気候の状態を敏感に認識するための知恵、(2)人の手によって自然のバランスを崩さないための知恵、(3)生活に必要なおおよそのものは、その素材から自らの手で栽培し製作を行う知恵、(4)日々の消耗品をできる限り無駄なく使用するための知恵、(5)廃棄物、汚水さえも、肥料などとして使い尽し、大地に還していくための知恵を抽出することができた。結論として、資源循環型生活とは、生活者が、上述のような知恵を実践し積極的に自然とかかわりを持つことこそが、その構築の礎になることを明らかとした。
  • 大鋸智, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 57(6) 9-18 2011年3月  査読有り
    本稿は、現代的ものづくりと伝統的ものづくりの2つのものづくりにおける資源循環体系の比較検討を通して、今日の生活者が留意していくべき生活文化のあり方を導出することを目指したものである。まず、「循環型社会形成推進基本法」をひもとき、現代日本のものづくりにおける資源循環の体系について考察を行い、次いで、新潟県山北地域の実地参与観察に基づきながら、羽越しな布という伝統的なものづくり文化が内包している資源循環型生活の諸要素を抽出した。その結果、日本にみられる伝統的な資源循環の要素は、「いただく」「むだをなくす」「いたわる」「やくだてる」「つかいつくす」「おかえしする」「いつくしむ」の7つの「ことば」で整理・把握することが可能であることを明らかとした。また、これらの「ことば」には、人が自然との共生を図る積極的な姿勢が内包されており、今後、地域の循環型生活を構築するためには、生活者自身による資源循環型生活の知恵の再認識・再確認とその実践が求められることを示した。
  • Akira UEDA
    BULLETIN OF JAPANESE SOCIETY FOR THE SCIENCE OF DESIGN 57(2) 101-110 2010年7月  査読有り筆頭著者
  • UEDA Akira, OOGA Satoru
    デザイン学研究 57(1) 65-74 2010年5月  査読有り筆頭著者
    In this paper, the goal will be to explore the Tokoname Region of Aichi Prefecture as one of the representative ceramic producing regions in Japan, in particular, examining its special characteristics and grappling with how the cultural concept of mottainai might appear as part of the identity of the region in question. This research is based on documentary literature, a field survey. As a result of Investigation, the author can summarize below the special cultural characteristics of mottainai as seen in the ceramic-producing region of the Tokoname in Aichi Prefecture. 1) The lifestyle principle of mottainai in the Tokoname Region is shared by residents through common modes of behavior and lifestyle, and it has transmitted and encouraged the thorough and optimal use of scrap and discarded pottery. 2) The special characteristics of symbiosis with the environment in the Tokoname Region are passed on as an expression of compassion toward people who live in harmony with their environment, people who evaluate the special characteristics of materials at hand and focus their knowledge subjectively. 3) Today, there are indications of actions designed to build regional identity based on an inheritance of a cultural lifestyle of traditional symbiosis with the environment while local people use tangible and intangible historical assets in a variety of ways.
  • 孫大雄, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 57(1) 17-26 2010年5月  査読有り
    本稿では、小池新二の1950年代の活動の足跡を、小池が残した著述などに照らしながら整理・考察した。この期における小池の活動は、次のように要約される。(1)小池は、インダストリアル・デザイナーの存在意義は産業のヒューマナイゼーションにあるとの期待を託し、JIDAの創立に関与した。(2)デザインにかかわる教育・研究の理論的追求の要請が高まるなかで大学教員となった小池は、日本デザイン学会創設の中心的役割を担った。(3)小池は、第1回米国工業デザイン視察団長として45日間にわたってアメリカにおけるデザイン事情を踏査しつつも、あくまでも日本の歴史・風土・生活に根ざした日本型デザイン風格を整えることの重要性を説いた。(4)大学人としての小池は、デザイン教育現場における多様な科学知の総合・統合を基底として人間生活にとってのデザイン実践が成り立つとの信念を堅持し、デザインの科学化に向けてのクロスファーティライゼイションを概念化するとともに、デザイン教育の体制を整備した。
  • IQBAL Mohammad Masum, HIGUCHI Takayuki, UEDA Akira, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 56(6) 19-28 2010年3月  査読有り
    Nowadays urban parks are emerging as one of the most important spaces in the urban fabric. Many urban theorists described them as lungs of the cities, as suffocated city dwellers can enjoy there some breath of fresh air in stressful city life. People come to them for recreation, social gathering, and passive enjoyment; they help to enhance the image of a city also. But the result of rapid urban growth during 20^<th> century in Asian developing countries, public open spaces like parks have been neglected as being a part of the urban pattern in the mega cities. This trend causes also to increasing crime and declining social interaction among city dwellers, as activities in these areas disappeared for lack of appropriate spaces or inaccessibility of them. The study carried out on the urban parks of Dhaka city to measure the accessibility and utilization of them regarding the effects of rapid urban growth on their physical and functional structure, and limitations in management and policy. The paper has first, evaluated the present state and trend of Dhaka's urban park as a case, secondly it has assessed the accessibility and utilization of the urban parks through a questionnaire survey in the case study area, thirdly results reveals the state of urban parks of Dhaka city in terms of accessibility and utilization, and finally it concludes with a evaluation of the results.
  • 郭全生, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 56(2) 83-92 2009年7月  査読有り
    本論は洛陽地域南石山村における唐三彩の制作技術の形成と変容について、職人からの聴書きを中心としてまとめたものである。その結果、以下の諸点を明らかにした。(1)唐三彩制作技術の起源は、漢代の鉛釉陶器の焼成技術が礎であった。唐代になり、単色釉から多種類の色釉へと発展し、色鮮やかな視覚的効果が形成された。(2)南石山村における唐三彩の制作・焼成技術は、約100年の歴史を経た今日でも、大筋において変わりがない。(3)伝統唐三彩と新工芸唐三彩の制作工程には多少の差異がある。1970年代以降、職人たちの間での分業化が進みつつある。(4)1980年代以来の大量生産の潮流とともに、唐三彩は多くの人びとの生活に導入されるようになった。しかしながら、伝統的装飾が減りつつあり、立体彫刻が中心となっている。
  • IQBAL Mohammad Masum, HIGUCHI Takayuki, UEDA Akira, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 56(1) 101-108 2009年5月  査読有り
    Urban parks in Dhaka city started developing during colonial period in the early twentieth century, but after the foundation of Bangladesh republic in 1971, the need for urban parks became greater as the city expanded and urban population rapidly grew. For Dhaka, it was also seen to start slowly after World War II, when Asian countries gained independence, and then Dhaka became the second capital of newly independent Pakistan (1947-1971). This study carried out on users of three representative parks (Ramna park, Bahadurshah park, and Gulshan lake park) of Dhaka city to determine individual features, their recreational needs and level of satisfaction. Surveys on users are important for planning, design and management processes of urban parks. The adequacy of Dhaka's urban parks has also been determined through the examination of user satisfaction. It was revealed through the survey outcomes at great extent that the users of Dhaka's urban parks primarily visit parks for passive recreation in a natural landscape. Among the users, 25-45 years old married male persons belonging lower income group are larger in number in general, though each park has its own user characteristics based on the socio-economic environment. Cross table data analysis were done and the variables were compared, and a chi-square (X^2) test was carried out.
  • 羅彩雲, 宮崎清, 楊静, 植田憲
    デザイン学研究 55(6) 29-38 2009年3月  査読有り
    本稿は、台湾における伝統的寝台「紅眠床」の風格様式を、時代性と地域性に留意しながら分析し、その変容を明らかにしたものである。実地調査により62体の「紅眠床」の資料を採集するとともに、文献調査を併用して、考察を行った。その結果、次のことを明らかにした。(1)使用者の社会的地位の表象であった漢式期の「紅眠床」には、主に床脚・堵を中心に、中国の伝統的紋様が施されている。(2)日本期には多様な装飾技術と新材料が導入され、「紅眠床」は職人の技術を競う対象となった。この期には、遮風を中心として、中国・西洋・日本の紋様が併用された風格様式の「紅眠床」が出現した。(3)戦後期では、大量生産が志向され、「紅眠床」は庶民的・実用的なものになった。彫刻が姿を消し、墨絵と挽物を中心とし、紋様の簡素化が図られた。(4)「紅眠床」の風格様式の変遷から、各時代の価値づけが推断される。すなわち、漢式期は彫刻の精緻度、日本期は新材料の運用、戦後期は価格の合理性に「紅眠床」の価値が置かれた。
  • 王海冬, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 55(6) 67-76 2009年3月  査読有り
    中国のオロチョン族における伝統的な樺皮活用文化の諸相を現地調査することを通して、本稿では、オロチョン族の生活文化の特質として次の7つを析出した。(1)「一物全体活用」:白樺を無駄なく多様に活用する知恵。(2)「自然との共存・共生」:生存・生活に不可欠な白樺を不必要に伐採せず、自然資源を適度・適量に活用する生活実践。(3)「地産地消・自給自足」:当該地域で生産し、当該地域で使用する、自らがつくり、自らが使う文化。(4)「縦型世代伝承」:家庭における父母から子どもに、子どもから次世代に伝承される生活文化。(5)「相扶相助」:樺皮活用のすべての所作において相互扶助しながら生存・生活を図ってきた文化。(6)「身土不二・天人合一」:厳しい気候・風土と一体化して、自らがつくり伝えてきた文化。(7)「資源循環」:補修に補修を重ねながら、最後には樺皮活用の器物の一切を土に戻していく、生と死の不断の輪廻の文化。
  • 郭全生, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 55(6) 103-112 2009年3月  査読有り
    本稿は、現地調査・文献調査を通して、洛陽地域南石山村における唐三彩工芸の生成から今日までの変遷を分析するとともに、唐三彩工芸を支えた職人たちの実像を明らかにしたものである。以下が判明した。(1)南石山村の唐三彩は、19世紀末の鉄道敷設工事の際に〓山で出土した唐三彩を、高氏族が瑠璃瓦焼成技術を活かして修復したのが起源である。職人たちは、墳墓から本物の唐三彩を盗掘し、その修繕ならびに複製を手がけるようになった。(2)南石山村の唐三彩職人たちは、唐三彩焼成技術を身につけたばかりか、漢代や北魏時代の出土品をも複製・鑑定した。(3)南石山村における唐三彩職人は、「家族伝授」ならびに「合作社伝授」の形態で、師徒制に基づく技術伝承を行ってきた。(4)「文化大革命」「改革開放」「計画生育」などの時代の潮流の中で、職人に対する歴史的・社会的侮蔑も相まって、村民の都市志向が急速に高まり、今日の南石山村唐三彩工芸文化は質的低下と後継者の激減に遭遇している。
  • 肖 穎麗, 宮崎 清, 植田 憲
    デザイン学研究 55(5) 19-26 2009年1月  査読有り
    <p> 本稿は、中国における意匠権保護のあり方を導出するための一過程として、古文献に基づき、古代中国における「模倣」の観念について考察したものである。<br> その結果、以下の知見を得た。<br> かつての中国において、「模倣」は「臨模」という概念でとらえられ、学習過程でなされるべき行為であった。また、その体験を通して、ものの創造行為に対する敬意を涵養しつつ、自らの独自性が培われた。「模倣」は、決して悪の行為としてみなされることなく、学習・鍛練に不可欠な奨励すべき行為として位置づけられていた。「型」「手本」への出会いを喜び、その「真」に近づくべく徹底した「模倣」を積重ねることが、オリジナリティのある自己の世界の創造に通じると考えられていた。<br> 「模倣」に関するこのような観念は、今後、知的財産としての意匠権のあり方を考えるにあたって、多くの示唆を与えてくれる。それゆえ、古代中国における「模倣」に関する観念は、今日、再認識されるべきである。</p>
  • 金起範, 尹永泰, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 55(5) 83-92 2009年1月  査読有り
    <p> 本稿は、韓国政府の主導によって各地に設立された「デザイン革新センター」の運営・活動状況とその特性を把握し、今後の在り方を検討したものである。以下の各点を明らかとした。(1)設立にあたっては、中央政府からの支援金の比重が高いなど、地域特性が十分に反映されているとは言い難く、運営に関しては、地域の特性を反映した「地域のデザインセンター」として運営していくことが求められる。(2)地域経済の活性化に焦点をあてた運営がなされており、地域の状況を踏まえ、地域のデザインインフラの底辺拡大に向けた取り組みが望まれる。(3)地域のデザインネットワークの中核となるべく、センターと地域社会との連携体系・連携プログラムを積極的に展開していく必要がある。(4)今後、センターは、自律的・自立的運営を目指すと共に、デザイン概念の地域社会への普及のためにも、状況改善に向けた方策の遂行が求められる。</p>
  • 楊紅, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 55(4) 11-20 2008年11月  査読有り
    本稿は、地域開発にかかわる「内発性」をめぐって、その問題提起の背景・意義に関するこれまでの主たる議論を回顧・整理するとともに、今後の「内発的地域振興」に関する展望を考察したものである。本論考では、地域と連携してのデザイン活動において「内発的地域振興」を展開していくためには、次の4つの視点を堅持していくことが肝要であることを指摘した。(1)地域からの「自発的」営みとして、該当地域の人びとが地域の抱えるさまざまな地域資源を再評価し、その発揚に基づく展開をはかること。(2)地域に存在するモノ・コト・トキは相互に連関していることを念頭に置き、それらを「全体的」につなげていく展開をはかること。(3)地域の生活文化・歴史との「連続性」を基底において構想することにより当該地域のアイデンティティが増幅される展開をはかること。(4)地域の人びとが抱きがちの「ないない尽くし」の発想は広い視野で自己の地域を見つめていないことの証左であるとの認識に立ち、自らの「眼の覚醒」をはかりつつ、地域のおよそすべての人びとが主人公となれる等身大の構想を柔軟に展開していくこと。
  • 肖穎麗, 宮崎清, 植田憲, 張福昌
    デザイン学研究 55(4) 57-66 2008年11月  査読有り
    中国における意匠権に関する認識の実態を明らかにする一環として、伝統工芸「惠山泥人」の特質と発展史を概観したうえで、江蘇省無錫市泥人研究所、無錫惠山泥人工場においてその制作に従事している職人へのアンケートならびに聴き取り調査を実施した。その結果は、次の3点に要約される。(1)職人たちは、知的財産権としての意匠権という概念を特段に意識化したかたちとして持ち合わせていない。(2)他の親方職人が行った仕事を盗んで真似ることは、職人の世界では禁忌とされていた。すなわち、意匠の盗用などは、元来、職人たちの世界ではありえなかった。それが、職人文化である。(3)個々の職人たちの意匠権に関する認識は必ずしも高くないものの、真摯にものづくりに取り組む気質のなかで、社会的規範として、意匠権保護が自ずとなされていた。しかし、伝統的な工芸文化のなかに経済的利益を目的とした意匠の模倣・盗用が生起しつつあることを考えると、「惠山泥人」を自らの風土に対応して展開される生活文化の造形表現として位置づけ、その文化的価値の再認識が求められる。
  • 王海冬, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 55(3) 45-54 2008年9月  査読有り
    中国の少数民族のひとつであるオロチョン族は、狩猟を生業とした移住生活のなかで、きわめて特徴的な生活文化を形成してきた。なかでも、白樺の樹皮である「樺皮」を材料としたさまざまな生活用具には、彼らが長い歴史のなかで培ってきた生活の知恵が豊かに内包されている。本稿では、伝統的な樺皮活用品に関する資料の収集に基づき、機能による分類を行い、形状、材料、作り方、内容物の相互関係から、伝統的な「樺皮」を用いたものづくりの意匠特質を考察し、以下の特質を導出した。(1)白樺を不必要に伐採しないことや枯らさないための掟が遵守されており、樺皮活用品にはオロチョン族の自然と人間の「共存」「共生」を願う生活哲学・生活文化が表出している。(2)日常生活用の樺皮活用品は使い方と機能により「住」「行」「遊」「食」「衣」「業(狩猟)」「業(採集)」「神」の8つに分類される。共通する特徴は、「変形しない」「割れない」「防湿性が高い」「軽量である」「耐久性が高い」などである。(3)樺皮活用品は単に日常生活に必要で欠かせないものであるのみならず、それにはオロチョン族の人びとの審美意織や生活理念、信仰などの諸側面における象徴的意味が包含されている。
  • 羅彩雲, 宮崎清, 楊静, 植田憲
    デザイン学研究 55(3) 81-90 2008年9月  査読有り
    本稿は、台湾における伝統的な寝台「紅眠床」の制作技術に関する諸特質を、中部地域の職人からの聴き取りを通して明らかにしたものである。また、本稿は、職人からの聴き取りと文献資料との比較・考察を行い、台湾における伝統家具「紅眠床」に関する史料作成を志向したものである。本稿では次のことを明らかにした。(1)「紅眠床」を構成する部材名称は、機能特質を表現しつつも、職人の居住地域によって異なっている。(2)「紅眠床」の用材は時代によって変化するが、とりわけタイワンヒノキが「紅眠床」の歴史と密接に関係していた。(3)「紅眠床」の製造工程は、職人の営業形態によって異なるプロセスになっていた。(4)「紅眠床」の寸法規格は独特な単位に基づいており、職人の居住地により、その演算方法が異なっていた。(5)伝統家具「紅眠床」の制作は、時代とともに分業化が図られ、個々に専門技術を有する職人の連携によってなされるようになった。
  • 肖 穎麗, 宮崎 清, 植田 憲, 樋口 孝之, 殷 正声
    デザイン学研究 55(2) 11-18 2008年7月  査読有り
    本研究は、中国における実効的な意匠制度を構築していくために、現行制度の運用実態と制度が抱える課題について調査・考察を行ったものである。本研究は今日の中国における主導的産業集積地といえる北京ならびに上海地域の企業を対象としたアンケート調査を実施し、意匠制度の利用状況と意匠の保護意識について解析し、現行の意匠制度における改善点を抽出した。中国においては、総じて知的財産に対する認識が浅く、意匠保護を実効性あるものにするには、先進諸国と協調しながら多発する模倣問題を解決する法制度を確立し、総合的な啓蒙活動を行うことが重要であると知見を得た。(1)中国では、特許法、意匠法、実用新案法は、日本のような独立した法体系として整備されておらず、専利法(特許法)として三法令がひとつの法令となっている。このことに、制度運用を困難にしている大きな要因がある。(2)中国と日本も比較においては、法体系以外にも、意匠制度を取り扱う機関や手続きなど、具体的な運営手段に大きな違いがある。(3)中国では、外国では公知であっても、中国内出版社への公開発表がなされていない限り、意匠特許登録が無効とはされている。このことが、中国の国内と国外において各種の紛争を起こす要因となっている。
  • 深澤琴絵, 植田憲, 朴燦一, 宮崎清, 樋口孝之
    デザイン学研究 54(4) 47-56 2007年11月  査読有り
    本稿は、「風呂敷」の語が定着するようになる以前の飛鳥時代から平安時代初期にかけての「包み」の文化の様態、すなわち、「包み」の素材・仕立て方・「包むもの」と「包まれるもの」との関連などを、聖徳太子遺品、正倉院御物、古書などを通して調査・解析したものである。その結果、次の諸点が明らかになった。(1)日本における現存する最古の「包み」は、飛鳥時代の仏教合戦に用いられた聖徳太子遺品で、それが今日の「風呂敷」の原初形態といえる。(2)奈良時代には、さまざまな正倉院御物を保護するための「包み」が出現する。御物はまず「包み」に包まれ、その後、袋や櫃に入れられて保存された。租庸調の産物を利用して「包み」に仕立てたものや舶来品の布を用いて「包み」の制作がなされた。(3)奈良時代から平安時代にかけての「包み」の平均寸法は約1mである。また、「包み」の仕立て・寸法・使い方は、「包まれるもの」との関係性によって工夫されていた。(4)「包み」を表す漢字はすでにAD100年頃の『説文解字』にみられ、魂に活力を付与して再生する意味が込められて「包み」が使用されていた。(5)『延喜式』には、渤海国や新羅との交易に「包み」が積極的に用いられたことが記されている。
  • 楊紅, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 54(3) 95-104 2007年9月  
    本小論は、費孝通の実証的地域発展研究論である『中国農村の細密化-ある村の記録1936〜82』および『江南農村の工業化-"小城鎮"建設の記録1983〜84』を主たる資料として、「内発的」地域発展の理論と主張を再検討したものである。費孝通は、終生、「志在富民」を学術研究の目標として追求し、実地調査を基礎に据えて、中国における貧困地域の地域振興と発展に有意義な主張と実践を行った。その地域振興理念は、今日、国内外で大規模に行われている「外発的」地域開発に対峙する「内発的」地域振興の様態を示したものとして、重要な意義をもっている。本小論においては、以下の4つを、費孝通の「内発的」地域振興理念を構成する基本理念として抽出・考察した。(1)「志在富民」を目的とする地域振興、(2)「地域の固有性」を基盤とした地域振興、(3)「地域に根ざし、地域に還元する」という地域の伝統文化思想を尊重した地域振興、(4)「地域経済の協調的発展」をめざした地域振興。これらの費孝通の指摘は、地域が自律的・自立的に発展していくための基本的指針として、「内発的」地域発展に多くの示唆を内包している。
  • 李煕周, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 53(6) 65-74 2007年3月  査読有り
    本稿は、近代における韓国最初の裁縫専門書といわれる金淑堂著『朝鮮裁縫全書』(1925年)の記述を通して伝統的な「針仕事:バヌジル」の様相を明らかにするとともに、その著に触発されて「針仕事」を生涯の仕事として行ってきた楊甲兆氏への聞書き等に基づいて、韓国女性にとっての「針仕事」の意義を考察したものである。「針仕事」は韓国女性が習得しなければならない大切な徳目とされ、韓国の女性たちは、子どものころから母親や姉妹のなす「針仕事」に触れながら、技術の習得を行ってきた。彼女らは、家族が着用する在宅着や外出着、表着や下着のすべてを、手づくりしてきた。それらには、季節の巡りに対応した材料選択と形状構成がなされていた。加えて、女性たちは、決して端切れさえも無駄にしなかった。一針一針に心を込めて縫い合わされたチョガッポには、自ずと、女性たちの感性が美しく表現されている。男尊女卑の厳格な儒教倫理が生活の隅々にまで貫徹されていた時代のなかで、その生涯を「針」とともに生き抜いてきた女性たちは、「針仕事」を通して自己のアイデンティティを表出し続けてきた。『朝鮮裁縫全書』にはそのような韓国女性の「針仕事」の文化が反映している。
  • 李煕周, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 53(5) 1-10 2007年1月  査読有り
    「閨房歌辭」は、朝鮮時代後期の女性たちが日々の暮らしを綴つたものである。本稿では、「閨房歌辭」にみられる「針仕事:バヌジル」の観察を通して朝鮮時代後期の「針仕事文化」の特性を考察し、次の諸点を明らかにした。(1)「針仕事」は、女性が16歳までに習得しなければならない大切な徳目として位置づけられていた。そして、一着の衣服をつくれることが一人前の成人女性としての証そのものとされた。(2)「針仕事」を通して、母と娘は、技術伝承だけでなく、女性に対する厳しい社会環境を共に越えようとする連帯性を培った。(3)「針仕事」は、女性自身の存在を表現する手段のひとつであった。また、「針仕事」の仕上がり具合が、女性の存在を社会的に認証する礎となっていた。(4)結婚生活は辛い家事労働の集積そのものであった。女性は、夜を徹して、「針仕事」を中心とする家事労働を貫徹した。(5)女性は、「針」と自分自身とを同等化することによって、辛い家事労働を乗り越えようとした。また、このような志向は、針仕事が韓国女性の生活そのものであったことを示している。
  • 金明蘭, 樋口孝之, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 53(4) 65-74 2006年11月  査読有り
    韓国では市街の景観整備において通りの舗面の個性化は端緒についたばかりである。優れたフットスケープデザインによる舗面の個性化は,機能性一辺倒に陥らない人間性豊かな歩行空間を構築する点で極めて重要である。本研究では,ヨーロッパ主要都市28ヵ所において歩行者専用道路の事例調査を行った。事例について空間の印象と舗面舗装の仕様の関係性について解析を行い,先に報告した日本の事例と合わせて考察を行った。その結果,舗面の個性化に向けた各様の表現方法として,沿道の建物群との調和,芸術的作品の導入,舗面の幾何的な構成による特徴化,地域産出材料の導入,地域固有の色彩の活用,自然環境との調和,地形への適応,外部空間の内部空間的変容,伝統的舗装技法の活用,地域の特徴を表象する視覚表現の導入,親環境素材の活用が抽出された。今後の韓国において通りの舗面の個性化を行うには,抽出された表現方法を参照し,地域特性ならびに通りの用途に適合するフットスケープデザインを実施することが肝要である。
  • UEDA Akira, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 53(3) 41-48 2006年9月  査読有り筆頭著者
    In this paper, the authors discuss the transition in people's world views caused by mechanization, as evidenced by the case of the production process of the rice cake. This research is based on documentary literature, a field survey, and other sources. Originally, the rice cake was made for special events, and people recognized it as one of the most important offerings to the gods. The traditional process of rice cake making required much time and effort and the use of many tools. In the 1950's, these tools were largely replaced by multi-functional machines. In the field survey, the process of rice cake making was observed: after choosing the best location, people made the traditional rice cake by relying on their senses and experience to use fire, steam, and other resources to careful and deliberate effect, then the finished cake was offered to the gods. As a result of our investigation, the following assertions can be made: (1) In the traditional process of rice cake making, people conceive of the medium of the rice cake as holy, and the process informs them about the stages of life. (2) During this process, the people are engaged in a direct sensuous experience, using their senses to learn more about the nature of their environment. This kind of experience affords people world views that spring from living interactively with the environment and within communities. (3) With the introduction of machines, the preparation process ceased to require direct experience. Concomitantly, the meaning and ceremony which the preparation of rice cakes had assumed socially and culturally gradually dissipated, and, subsequently, the people's world views shifted from a deeply ingrained and holistic foundation to a more superficial one.
  • UEDA Akira, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 53(3) 59-66 2006年9月  査読有り筆頭著者
    Nowadays, in Japan, circumstances of "mono-dukuri (making objects)" are in a turning point, because of diversifying of life, advancing and enlarging the scale of "mono-dukuri (making objects)" itself, transfer of production base to foreign countries and an economic depression, etc.. Especially, in recent years, "disinterest in the technology" "disinterest in the science" of the younger generation are tend to grow, it is evermore necessary to engage them in the science & technology with nurture their inquisitiveness towards natures and expand their logical thinking and creative abilities. At the same time, the fact above-mentioned brings the necessity to consider design education fundamentally. In this paper, the authors discuss the significance of design in science education, through practice of "Design workshops -Mono-dukuri (Making objects) workshops" for elementary schoolchildren and junior high school students by the staff of the faculty of engineering of Chiba University. Through an investigation and a questionnaire survey, following assertion can be made: It was possible to cultivate elementary schoolchildren and junior high school students following important points: (1) there is a science in the background of "mono-dukuri (making objects)," (2) there is the pleasure with the creation can be learnt by accomplishing "mono-dukuri (making objects)," (3) there are various solutions in "mono-dukuri (making objects)."
  • 金明蘭, 樋口孝之, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 53(2) 1-10 2006年7月  査読有り
    日本では,1970年代以降,地域づくり・町づくり運動に対する住民意識の高まりとともに街路景観に配慮した道路整備が行われ,歩行者に視覚的楽しみを与えるフットスケープデザインが各地の代表的街路や商店街において展開されるようになった。日本各地の25ヵ所の通りについて文献調査ならびに実地調査を行い,調査対象としたフットスケープデザインについて以下の知見が得られた。(1)ブロック工法として石材のほかに磁器質・陶器質のタイル材の利用が多くみられる,(2)ブロックエ法ではパターン展開に工夫が施されている,(3)地域性を表現するために絵タイルの使用例が複数みられる,(4)休息,ショッピングなど,通りの利用目的に合わせてFSDによるイメージが形成されている,(5)官と民が協調した道づくりが良い成果を導いている。総じて,舗装材やデザイン展開の技法などが多様であり,地域性を演出する配慮がなされている。事例を解析することからデザイン開発の方法論を確立していくことがこれからの課題である。
  • 張瑋琦, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 53(2) 49-58 2006年7月  査読有り
    台湾の原住民地域においては、近年、地域づくりの方策として観光発展が重要視され、「原住民が主体となった観光」という概念が提起されている。こうした現状を踏まえ、本稿では、「原住民が主体となった観光」を創生することの重要性を考察するとともに、「観光デザイン」の役割と方針を検討した。台湾・花蓮県の太巴朗と馬太鞍の2つの原住民集落における現地調査に基づいて比較解析すると、両集落にはそれぞれにアイデンティティを有した観光活動が展開されているものの、相対的に、前者は「これまでの観光文化」の延長線上にあり、後者には「観光デザイン」の視点が組み込まれて「新たな観光文化」の創生がみられることがわかった。この解析を踏まえ、本稿では、「観光デザイン」の重要性を再認識しつつ、「原住民が主体となった観光」を創生していくための指針として、(1)地域デザインの自主権を住民に返すこと、(2)「影も見る・影も見せる観光」を創生すること、(3)「ホストが見る観光」をデザインすること、(4)新たな目で地域解説員の役割を考えることの4つを提起した。
  • 李煕周, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 53(2) 59-66 2006年7月  査読有り
    本稿は、今日までほとんど省みられることがなかった韓国における「針仕事:パジヌル」文化を支えていた女性の姿と、その文化を創出した社会的状況を、古文献を通して明らかにしようとしたものである。厳格な儒教倫理が生活の隅々にまで貫徹された朝鮮時代後期は、女性にとって抑圧・束縛の時代そのものであった。支配階級の両班にあっても、また、庶民にあっても、男性上位の観念が絶対的で揺るぐことがないなかで、「針仕事」に精出すことが女性にとっての大切な徳目とされた。女性は内房(アンバン)に閉じこもり、糸紡ぎから裁縫・刺繍に至るまでの労働を行った。針・尺・鋏・鏝・アイロン・糸・指貫の7つを「友」とし、女性は、家族の衣生活のすべてを賄った。1本の針を大切にし、それが折れたときには心から嘆き働哭した。朝鮮時代後期の女性による「針仕事」が今日の私たちを驚愕させるほどに昇華された美的世界をなしているのは、それらに、抑圧・束縛の時代のなかで生きた当時の女性の慎ましやかな自己表現が表出されているからである。その行為と作品には、当時の女性たちのまさにアイデンティティが見て取れる。
  • YOON Young-tae, PARK Chan-il, UEDA Akira, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 53(3) 49-58 2006年  
    The purpose of this research is to study and suggest an activation proposal for the Regional Design Innovation Center established as a national design policy in South Korea. For this proposal, the established process of Regional Design Innovation Center needs to be researched and the present condition of Regional Design Innovation Center is analyzed for the promoting plan. As a result, three basic elements to activate the local design center must be established. The first is the grasp of local characteristics and the establishment of operation directions. The second is the recognition of the necessity for the local design innovation center and support system, and the third is the establishment based on the recognition of design necessity from the local residences and industries. For the promotion of the local design innovation center, the efforts of the roles and function must be required innovatively and continually to activate the local design innovation centers. In order to promote the local design innovation centers, the following innovations are recommended: 1) Adequate design support for the local industries. 2) The development of various design programs with the purpose of public enlightenment and recognition of design. 3) The establishment of plans to support established facilities and expensive equipment that is available to local design consultancies and small businesses. 4) The construction of infrastructure relating to design information and offered to the local community. 5) The development of collaborative programs between industries, institutes, and organizations. 6) The positive participation in the development of local characteristics and local image improvement projects to enhance the community.
  • 翁群儀, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 52(5) 35-44 2006年1月  査読有り
    本稿は、台湾漆器「蓬莱塗」の意匠特質を調査・研究したものである。「蓬莱塗」は、日本領有時代の台湾において、日本人の漆器制作者であった山中公が、台湾で体験した異国情緒をモチーフとして日本人向けに制作を始めたことを起源とする漆器である。本研究では、台湾漆器の発展史とともに、「蓬莱塗」の位置づけ、ならびに、制作工程、モチーフの調査・分析などを通して、「蓬莱塗」の特徴を明らかにした。「蓬莱塗」の特徴は以下の通りである。(1)地域の実風景をモチーフとした地域性の溢れる絵柄が施されている。(2)原色の多用によって、台湾の活力が表現されている。(3)力強い彫刻によって、台湾の素朴な民風が表現されている。「蓬莱塗」は、今後においても、台湾社会を映し出す漆器デザインとして発展していくことが期待される。また、漆器のみならず、伝統的工芸品産業の発展に向けてデザインにおけるアイデンティティを確立していくことは、今後、台湾のさまざまな分野で検討されるべき重要課題である。
  • 王文雄, 植田憲, 宮崎清
    Bamboo journal (21) 46-56 2004年3月  査読有り
  • 李宜欣, 宮崎清, 植田憲
    デザイン学研究 50(2) 27-36 2003年7月  査読有り
    本稿は、「生活工芸運動」が展開されている福島県三島町の高齢者へのアンケートならびにインタビューを通して、「ものづくり」が高齢者の生き甲斐づくりにどれほど寄与しているかを検討したものである。その結果、次のことを明らかにした。(1)三島町の高齢者は、自らの「ものづくり」によって、「健康」「自己存在の確認」「人びとの交流」「自然と触れ合い」の四つを獲得し感得している。(2)「ものづくり」を行っている多くの高齢者たちは、それら四つの意義をもたらす「ものづくり」を生き甲斐としてとらえている。(3)現在「ものづくり」を行っていない高齢者のなかにも、「ものづくり」に四つの意義を認めている者が少なくない。(4)「ものづくり」を行っている高齢者は、「よりよく生きる」ための要求・願望を抱き、「ものづくり」の十全な展開への指針を提示している。超高齢者を眼前に控えている今日、高齢者が能動的に生きるための活動のひとつとして「ものづくり」を位置づけ、その展開を図っていくための示唆を、本稿の諸データならびに考察は有している。
  • 大塚康平, 植田憲, 宮崎清, 朴燦一
    デザイン学研究 50(2) 53-62 2003年7月  査読有り
    本稿は、江戸時代に、どのような経路を経て、裂き織りの材料となった古布・木綿布が木綿を栽培することができなかった寒冷地・東北地方に渡ったかを、文献資料に基づいて整理したのもで、以下の点を明らかにした。1)裂き織りの材料となる古布・木綿布は、近郊に生産地を抱えていた大阪に集積され、交易船によって、大阪から大消費都市・江戸に運ばれた。寒冷地・東北地方の港には、西廻り航路(北前船)、東廻り航路で運ばれ、港からは河川交通によって内陸部に搬送され、陸揚げ後は、陸路を通じて移送された。2)東北地方や蝦夷地の帰り荷として、鰊や鰯の搾り粕が木綿を育てるための肥料として運ばれ、畿内を中心とする木綿栽培地で活用された。3)主要な寄港地に存在した古着屋は、裂き織りの材料としての古手・ボロ布の流通に重要な役割を果たした。とりわけ、大消費地・江戸の古着屋は、資源循環・再利用機構の要をなした。
  • 尹明淑, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 50(1) 1-10 2003年5月  査読有り
    山岳部・化北面の民家における伝統的な苞の文化を、制作・使用の両面から観察・考察した。その結果、次の特質を導出した。(1)地域内自作:生活に必要な苞は家々で自作された。(2)環境対応の素材活用:稲藁とともに、萩、萩の皮、玉蜀黍などが苞づくりの素材として活用された。(3)地理的条件対応の形態:起伏の多い地形での乾燥・運搬・収納などの行為に対応した苞の形態が工夫された。(4)生活空間構成対応の使用秩序:ドジャンを有する家は苞のほとんどがドジャンに収納されたが、ドジャンをもたない家は軒下空間などが苞の収納に当てられた。(5)地域における経済力の象徴:苞の所有状態は、そのまま、個々の家々の経済力を象徴していた。(6)信仰対応の規範:さまざまな神を屋敷空間に祀り、穀物を容れた苞が神との交信の媒体となった。(7)人間関係の調整:苞の貸し借りが行われ、苞が家々を結びつける役割を果たしていた。(8)資源循環型活用の秩序:すべての苞が補修・転用され、最終的には土に戻された。
  • ROTHBUCHER Berafiiard, UEDA Akira, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 49(6) 19-26 2003年3月  査読有り
    In this paper the authors discuss the methodology of eco design process based on a case study which compare "Branntwein" and "Sake" to preserve earth environment. Following assertion can be made: (1) Both "Branntwein" and "Sake" corresponded to having changed from the product of, so to speak, accidental discovery to the industrial manufacture based on many scientific technology, and the container has varied from the hand processed goods of a natural material to the industrial production article. (2) Although once custom to drink "Branntwein" and "Sake" is restricted by occasion and a class, in the popularization process of Sake and Branntwein, the abandonment container is manufactured in large quantities, and became typical product in consumption culture especially in Japan. (3) In central Europe, containers that made of such as metal, glass, and pottery, are also used regularly until today, and requirements, such as its recovery and purpose for spending, are incorporated in the process of a container design. (4) In Japan it is important to give a position to the concept which involved in "kayoitsubo" that was once popular in daily life in Japan, and by improving design process, package should promote the "user", not "consumer". (5) "Cultural Custmization" is appropriate concept for designer to create ecological society.
  • 尹明淑, 植田憲, 宮崎清
    デザイン学研究 49(5) 21-30 2003年1月  査読有り
    韓国の平坦部渓谷面の民家における伝統的な苞の使用特性を把握するため、当該地域の民家における苞の使用について観察・分析し、次の諸点が析出された。(1)地域内での自作:購入された苞があるものの、藁を素材とする苞は自作された。(2)環境に対応した素材活用:入手・工作の容易な藁を素材とする多様な苞が稲作経営と対応して制作された。(3)生活に対応した形態:収穫から貯蔵までの階梯に対応した苞づくりがなされた。(4)生活空間構成に対応した使用秩序:苞の機能と収納空間との間に一定の秩序が形成されていた。(5)家々の経済力の象徴:苞の所有量と大きさ・容量が家々の所有耕地面積を反映していた。(6)信仰観念に結びついた使用規範:稲作の平安を祈念する信仰用具として苞が活用された。(7)人間関係の調整と共同体的社会の維持:苞の賃借によって家々の絆が維持された。(8)資源循環型利活用サイクル:最終的に土に返される苞の文化は不断の資源循環型物質文化をなしていた。
  • Bemhard Rothbuchar, 植田 憲, 宮崎 清
    デザイン学研究 49(5) 51-60 2003年1月  査読有り
    今日、すべての工業国は、環境汚染というきわめて大きな問題に悩まされている。工業製品は、その大きな要因のひとつに挙げられる。工業製品の開発には、つねに、工業デザイナーが加わっており、デザイナーには、ひとりひとりがその責任を認識し、積極的にその解決へ向けた取り組みをすることか求められている。つまり、工業デザイナーは、製品の企画・開発に際して、その製品による環境汚染の程度を可能な限り減少させるように意識する必要があるといえる。本稿は、製品の企画・開発に際し、環境汚染をもたらす要素を減少させる可能性を明らかにするための論理的背景を考察することを目的としている。具体的には、記号論に基づき、製品の知覚と製品の物質的構成が相対的関係をもたないことを明らかとするとともに、デザイン活動を行う際にデザイナーが有するべき概念として、「Cultural Customization (文化的適合)」を導出する。
  • UEDA Akira, PARK Chan-il, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 48(6) 11-20 2002年3月  査読有り筆頭著者
    This paper discusses the Inter-Regional Cooperation based on Endogeneous Development that take place in three places located in Northeast Tochigi Prefecture; Kuroiso City, Nasu-machi, and Kurobanemachi. In the beginning, it research the local residents' wishes through the fieldwork and interview survey. This research planned the common theme,"Suijunkyc (water circulate homeland) that nurtures, flows and creates life", which the"water"as the one of main natural resources that holds the area together. According to the theme, the area can be considered as three"Sato", which exist together as a livelihood system. And they are not constrained by usual administration system. The three"Sato"means"Sato where the water begins","Sato where the water gathers",and "Sato where the water flows"and set the activities that reflect each concept of space. The area exist as a whole activities of each space and the local cooperation accomplished beyond common administration reel. The regional cooperation beyond the administration reel is achieved by basis of the endogeneous development theory. Furthermore, this cooperation become an efficient strategy to make a sustainable society in future.
  • UEDA Akira, PARK Chan-il, MIYAZAKI Kiyoshi
    デザイン学研究 48(6) 1-10 2002年3月  査読有り筆頭著者
    This paper is the second report of a basic study on the inter-regional cooperation based on the theory of endogeneous development. It takes three municipalities in the northeastern part of Yamanashi Prefecture, Enzan City, Makioka-cho and Mitomi-mura, as the fields of research. This study aims to work out the measures for regional revitalization through rediscovery and re-recognition of regional resources based on a fieldwork and to examine the functions of inter-regional cooperation. This research do the following process to establish the measures for regional revitalization; (1) developing eight Basic Principles concerning regional development, with regional resources at its center, as a guideline for regional revitalization, (2) developing Practical Models as an embodiment of these principles, on the premise that each party plays its own role, and (3) as activities based on the Practical Models proceed, multiple Basic Principles, all of which are closely connected to each other through Practical Models, will be attained, which brings realization of regional revitalization based on inter-regional cooperation that embraces these three municipalities all together. In these measures, inter-regional cooperation works as the following; (1) each one of the residents has a role to play, (2) regional revitalization is based on reconfirmation and re-recognition of the life culture on the whole, (3) regional resources shall be preserved and created as a regional identity, and (4) untapped regional resources shall be put into use to create variety of products.

MISC

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  • 蘇 文宇, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 70 456 2023年  
    梳篦は身近な生活用具として、外観こそシンプルではあるが、制作工程は複雑でかつ繊細である。複数の工程があり、多くの人が協力しなければ完成できない。その過程の中で、梳篦工芸のうち竹工芸のひとつとして地域住民も参加できる生活のつながりを築いてきたと言える。地域と地域、人と人との協力を通じて、できる限り竹資源を活用する。そのつながりは知らず知らずのうちにできており、分業化の関係だけでなく相互に協力して資源を活用する関係となった。
  • 陳 娟志, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 70 464 2023年  
    本稿では、市原歴史博物館において一般来場者に向けた体験講座および展示の試みについて報告するとともに、来館者の属性を明確化することを目的とした。本研究では、来館者から質問紙調査により評価を得、その評価および類型化を導出した。多種応答分析方法により、触れる展示の展開に対して肯定的評価のグループ、中立的評価のクループ、否定的評価のグループ3つのグループに分けられ、X軸を「(文化財に対する)親しみやすい―親しみにくい」、Y軸を「参加型―非参加型」解析した。さらに、クラスター分析により、4つのクラスターを得、それぞれ「探求志向型」「文化財の保護志向型」「体験志向型」「保守志向型」と体験者の属性を類型化することができた。
  • 李 敏, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 70 454 2023年  
    近年、中国政府は古代建築物の保護の重要性を強調しているが、文化大革命や急速な経済発展により、全国各地の数多くの古建築や文化遺産が破壊され、それに伴い、多くの伝統行事・儀礼が消失した。潘氏祠堂は南京市の非物質遺産(無形文化財)に登録され、また、2017年には、国の文化遺産保護政策により、建物は修繕がなされたが、その使用方法やそれに伴う空間特質については十分に理解されているとは言い難い。今日、それらの把握と現代社会における活用が求められている。 本稿においては、文献調査、現地調査に基づき、潘氏祠堂の内部空間を再現することを目的とした。当該地域の生活者らとともに祠堂の復元に取り組むことで、文化遺産の保護と地域振興に貢献することを目指した。
  • 宮田 佳美, 李 月, 都 宥林, 沈 恵園, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 69 128 2022年  
    千葉市若葉区いずみ地区において、「炭焼き小屋再生プロジェクト」を展開した。文献調査および現地調査を実施し、当該地域において炭焼き小屋が生活文化の形成において重要な位置づけにあったことが確認された。これを再生することにより、森林保全を行うだけではなく、地域づくりにつなげる活動へと展開することが重要といったことが参与者の間で確認され、任意団体が設立された。今後、炭焼き小屋の具体的な利活用方法について検討し、多くの人が地域づくりに参与できる体制づくりを行いたい。
  • 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 69 380 2022年  
    地域社会の自立・自律が求められる今日において、いかにして地域の文化を伝達・共有していくかは喫緊の課題である。本稿は、地域の生活者が参与可能な、デジタル時代における地域文化の発信・共有の場としての地域博物館の構築を目指す研究の一環である。 とりわけ本稿では地域博物館におけるデジタル造形機器を活用した展示器具の制作の事例を取り上げ、一連の活動から得られた知見ならびに課題を報告した。聞き取り調査・現地調査に基づき、地域の博物館における展示器具の不足に伴う展示の限界、収納庫のひっ迫等の課題を把握したのち、デジタル造形機器を活用した3点の展示器具の制作を行った。それらは、上記の課題に応えるものであったが、未だ①展示対象の大きさや重量における強度の限界の検証、②制作過程において放出される汚染物質量の検証等の必要性、③レーザー加工機をはじめとした一般的なデジタル造形機器で制作可能な仕様の検討等取り組むべき課題は少なくない。今後はこうした課題に取り組みつつ、本稿で制作したデジタルデータをはじめ、得られた知見を地域内で蓄積、共有するためのデジタル造形機器活用事例のアーカイブの構築等も視野に入れ、活動を展開したい。

講演・口頭発表等

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  • 呉 竹雅, 張 淑怡, 沈 恵園, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 2022年 一般社団法人 日本デザイン学会
    本研究は、江戸時代からものづくりが盛んに行われてきた東京都墨田区を対象に、伝統的ものづくりを文化の側面から振興するための指針と提案を導出することを目的としたものである。文献調査により墨田区における伝統的ものづくりの歴史的文脈を概観したうえ、「長板中形」を対象に事例調査を行った。その結果、かつて当該地域内で「長板中形」の生産と使用のエコシステムが成り立っていたと考えられる。調査結果に基づき、墨田区における伝統的ものづくりの振興の指針として以下の三点を導出した。①身近にあるもの・人・ことといった資源の全体活用を志向する、②つくり手と使い手をより緊密に繋ぐ展開を志向する、③地域で伝統的ものづくりの製品の使い方を創出する機会を作る。
  • 陳 祉佑, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 2022年 一般社団法人 日本デザイン学会
    近年の生活の変容を要因として、多くの歴史資産が急速に潜在化する傾向にある。この状況は、千葉県市原市においても例外ではない。当該地域は、養老川がもたらした肥沃な土地と緑豊かな山々に恵まれ、古くから、有形・無形のさまざまな資産が創出・継承されてきた。こうした地域にある大切な資源を再発見するとともに、後世へつなぐネットワークを構築することを目指して、2015(平成27)年、「市原歴史博物館」事業が始められた。同博物館においては、近年急速に発展・普及しつつあるデジタル造形技術をいかに導入するかの検討がなされている。 本研究は、市原歴史博物館事業における試行に基づき、地域博物館におけるデジタル造形技術の導入の可能性を見出すとともにそのあり方を明確化することを目的としたものである。 具体的事例として、実物が残されていない藤原式揚水機を取り上げ、さまざまな文献資料に基づきデジタル再現し、実験・検証を繰り返し、動作モデルを制作した。このプロセスの記述を通じて、以下の各点を明らかにした。 (1)デジタルデータは修正し易いことから、比較的柔軟に「復元」「保存」へのアプローチが可能である。その場合、頻繁に出力し検証するなど、学芸員らとの密な情報共有が重要である。(2)デジタルデータは共有し易いことから、地域資源を「共有」する有効な手段になり得る。(3)デジタルデータを出力するなどの「活用」を通して、実物が残されていない歴史資産の価値を高めることが可能である。なお、本研究においては、上述した知見に基づき、教育キットの提供を行い、その効果を確かめた。
  • 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 2022年 一般社団法人 日本デザイン学会
    地域社会の自立・自律が求められる今日において、いかにして地域の文化を伝達・共有していくかは喫緊の課題である。本稿は、地域の生活者が参与可能な、デジタル時代における地域文化の発信・共有の場としての地域博物館の構築を目指す研究の一環である。 とりわけ本稿では地域博物館におけるデジタル造形機器を活用した展示器具の制作の事例を取り上げ、一連の活動から得られた知見ならびに課題を報告した。聞き取り調査・現地調査に基づき、地域の博物館における展示器具の不足に伴う展示の限界、収納庫のひっ迫等の課題を把握したのち、デジタル造形機器を活用した3点の展示器具の制作を行った。それらは、上記の課題に応えるものであったが、未だ①展示対象の大きさや重量における強度の限界の検証、②制作過程において放出される汚染物質量の検証等の必要性、③レーザー加工機をはじめとした一般的なデジタル造形機器で制作可能な仕様の検討等取り組むべき課題は少なくない。今後はこうした課題に取り組みつつ、本稿で制作したデジタルデータをはじめ、得られた知見を地域内で蓄積、共有するためのデジタル造形機器活用事例のアーカイブの構築等も視野に入れ、活動を展開したい。
  • 宮田 佳美, 李 月, 都 宥林, 沈 恵園, 青木 宏展, 植田 憲
    日本デザイン学会研究発表大会概要集 2022年 一般社団法人 日本デザイン学会
    千葉市若葉区いずみ地区において、「炭焼き小屋再生プロジェクト」を展開した。文献調査および現地調査を実施し、当該地域において炭焼き小屋が生活文化の形成において重要な位置づけにあったことが確認された。これを再生することにより、森林保全を行うだけではなく、地域づくりにつなげる活動へと展開することが重要といったことが参与者の間で確認され、任意団体が設立された。今後、炭焼き小屋の具体的な利活用方法について検討し、多くの人が地域づくりに参与できる体制づくりを行いたい。
  • 土屋篤生, 青木宏展, 植田憲
    アジアデザイン文化学会 第15回国際研究発表大会 概要論文集 2021年10月

共同研究・競争的資金等の研究課題

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