長見 晴彦, 田村 勝洋, 内藤 篤, 矢野 誠司, 山本 剛史, 中川 正久, 中瀬 明
日本臨床外科医学会雑誌 52(7) 1582-1586 1991年
今回,私達は切除不能肝癌症例に対して間欠的肝動脈遮断(Intermittent Hepatic Arterial Occlusion: IHAO)と制癌剤併用療法を行うため,開腹下に5FrのSwan-Ganz (S-G)カテーテルを胃十二指腸動脈から挿入し,その先端を左右肝動脈分岐部直前に留置した.またWinslow孔へPenroseドレーンを留置した.術後経過は順調であったが,術後第6日目にPenroseドレーンから突然多量出血があり,直ちにS-Gカテーテルより肝動脈造影を行ったところ左肝動脈起始部に形成されたX線フィルム上直径8mmの仮性肝動脈瘤切迫破裂による腹腔内出血と診断した.しかし出血に対しては輸血,止血剤投与を行い治療後2日目に止血しえた.なお仮性左肝動脈瘤はその治療期間中にS-Gカテーテルによって塞栓された.これまで本邦では仮性肝動脈瘤破裂症例は文献で検索した範囲では6例報告されているが,その診断,治療には充分な注意を要すると考える.