伊藤 彰一, 服部 孝道, 福武 敏夫
日本脊髄障害医学会雑誌 16(1) 38-39 2003年4月 査読有り
アトピー性皮膚炎(AD)連続65例を対象に,問診及び神経学的診察を施行した.また,診察上何らかの神経学的異常を有する37例を対象に頸椎MRI(1.5T)を施行し,疾患対照として脊髄炎を有する多発性硬化症(MS)の連続26例と,12例の健常対照(NC)にも頸椎MRIを施行した.ADでは自覚症状として四肢痺れ感が14%,四肢脱力感が6%,頻尿感が6%で認められた.また,何らかの神経学的徴候が72%で認められ,その内訳は腱反射異常が60%,感覚低下が34%,筋力低下が23%,Babinski徴候が5%であった.神経学的徴候の出現頻度は,15歳未満の小児AD例でも全AD例と同様であった.頸椎MRIでは,椎間板変性がAD86%,MS50%,NC58%,椎間板突出がAD78%,MS54%,NC67%であり,ADで有意に高頻度であった.椎体配列不整はAD65%,MS65%,NC8%であり,ADとMSで有意に高頻度であった.頸髄圧迫はAD24%,MS8%,NC8%であった.類推MRIでの異常所見の出現頻度は,小児AD例と全AD例でほぼ同様であった.椎間板変性の程度と血清全IgE値には正の相関傾向が認められたが,明らかな有意差はなかった