小曽根 英, 松浦 佑介, 松山 善之, 向井 務晃, 赤坂 朋代, 鈴木 崇根
日本手外科学会雑誌 36(3) 374-377 2019年12月 査読有り
陳旧性の腱断裂の治療に際しては,多くの場合,Pulvertaft法が用いられる.しかし,術後のリハビリテーションによる伸長の量は渉猟する限りでは報告がない.本研究ではその伸長を検討した.新鮮凍結屍体を使用し,総指伸筋腱,示指伸筋腱,小指伸筋腱を用いてPulvertaft法を行なった.2,3,4,5 weavesで比較・検討を行なった.各検体数は6ずつであった.5-15N,1000cycleで繰り返し牽引試験を行ない,伸長した長さを求めた.その後に破断強度も測定した.2,3,4,5 weaves群における繰り返し牽引負荷後の伸長距離(平均±SD)は,3.48±0.29mm,2.69±0.33mm,2.24±0.17mm,2.52±0.23mmであった.2 weavesでは有意に伸びたが他の各群間に有意差は認めなかった.2,3,4,5 weaves群における破断強度は,それぞれ38.44±3.73N,67.86±6.15N,99.75±14.67N,96.58±10.62Nであった.こちらも2 weavesのみで他と有意差を認めるのみであった.Pulvertaft法を使用した腱縫合では術後のリハビリテーションにより3,4,5 weavesの場合には2〜3mmは伸びる可能性があることが示唆された.術後の緩みを含め,罹患指,利き手・非利き手,筋の短縮の有無などを考慮して手技を行うことで,より良い成績を来すことが期待できる.(著者抄録)