鈴木 桂子, 北池 正, 宮崎 有紀子, 野尻 雅美
産業衛生学雑誌 45(3) 105-113 2003年
本研究の目的は海外派遣労働者の精神健康度に関連する要因を明らかにすることである. 対象は30~49才の某電気製造業男性社員で北米, 東南アジア, 西欧地域の初回派遣者でかつ現地間異動をしていない317名である. 対象者に自記式質問紙調査を実施した. 調査項目は精神健康度の指標であるGeneral Health Questionnaire (GHQ)12項目, 基本特性(年齢, 派遣期間, 派遣地域, 職種)4項目および社会文化要因, 医療衛生要因, 業務要因, 日常生活要因, 対人関係要因, 自然環境要因の37項目である. 分析はGHQ得点を目的変数とし, 説明変数を基本特性と各種要因とし重回帰分析を行った. その結果, 海外派遣労働者のGHQ得点と有意な関連がみられた要因は, 社会文化要因である風俗習慣の違いによる不自由さ(β=0.256), 医療衛生要因である医師の指示理解能力のなさ(β=0.129), 業務要因である現地人上司との関係の悪さ(β=0.229), 年休消化日数(β=−0.129), 日常生活要因の週1回未満の運動習慣(β=0.141), 喫煙習慣(β=0.136), 対人関係要因の家族交流のなさ(β=0.177), 相談者の不在(β=0.138), 単身派遣(β=0.119), 現地交流のなさ(β=0.117)であった. 関連がみられた10項目のうち4項目が対人関係要因であることから, 海外派遣労働者の精神健康にとって, 対人関係が重要であることが考えられた.