宮﨑甲, 三枝一将, 松本隆
千葉大学教育学部研究紀要 68 401-410 2020年3月 責任著者
[要約]平安時代後期から鎌倉時代の仏像の造像法研究は,木造仏においては修復事業などによりその成果が蓄積されてきた一方で,鋳造仏(金銅仏/鉄仏)については未だに途上であると言える。平安時代後期から鎌倉時代の鋳造仏の原型および鋳造技法に関しては,現在では木造原型(木型)による割込め型(合わせ鋳型)法が定説となっている。本研究チームは現在,千葉県館山市の那古寺銅造千手観音菩薩立像の科学調査等を準備しており,その過程で類型の多臂仏の調査を行った。本稿は千葉県・長柄町銅造准胝観音菩薩立像,滋賀県・園城寺銅造千手観音菩薩立像,兵庫県・常勝寺銅造十一面千手観音菩薩立像の3軀の調査報告とし,特に腕部の形状や構造に着目して原型および鋳造法について若干の推論を試みた。報告をまとめる過程で,蝋型鋳造法や木造原型焼失鋳造法等,またはその混合技法の可能性について言及することとなった。