新島 眞文, 角坂 育英, 藤澤 武彦, 馬場 雅行, 広島 健三, 茶谷 信行, 堀江 美正, 滝口 裕一, 木村 弘, 長尾 啓一, 栗山 喬之
気管支学 20(4) 348-352 1998年
悪性黒色腫気管支転移により一側無気肺をきたした症例に対し, 気管支鏡下Nd-YAGレーザー照射に, β-インターフェロン(INF-β)気管支内局所注入療法を併用したところ, 有効であった症例を経験したので報告する。症例は56歳男性。7年前に右足底部悪性黒色腫広範皮膚切除術と右鼠径部リンパ節郭清術を受け, その後局所再発なく経過していた。平成2年9月に血痰と左側一側無気肺の加療目的にて入院となった。気管支鏡所見では, 左主気管支をほぼ完全に閉塞する易出血性の赤褐色の腫瘤を確認した。入院時精査にて骨, 脳等への全身性転移が認められ, また左主気管支腫瘤部の擦過細胞診検査にて悪性黒色腫の診断を得たため, 転移性気管支悪性黒色腫と判断し, Nd-YAGレーザー気管支鏡下局所照射を行ったが, 腫瘍の再増殖と壊死物質の蓄積で内腔は容易に再閉塞をきたした。このためレーザー照射に加え, 腫瘍およびその近傍へINF-βの局所注入を併用し, これにより腫瘍の再増殖が抑制され, その後の気道開存を維持しえた。本症例は, この4ヵ月後に脳転移巣の増悪により死亡しているが, 剖検時の所見でも, 気道開存効果が保たれ, INF-β局注療法併用が, 臨床的に有効であったと考えられた。