河野 俊彦, 廣島 健三, 大和田 英美, 林 豊
大気汚染学会誌 27(4) 212-219 1992年
大気汚染物質のうち, 最も一般的に存在するオゾン (O3) と生活と密接に関連したタバコ煙の複合作用が, 呼吸器系にどのような影響を引き起こすか明らかにする目的で動物実験を行った。5週令のWistar系雄ラットを用い, 週5回タバコ煙暴露を行った群, 0.5 ppm O3に1日8時間, 週6回暴露した群, 0.5 ppm O3に1日8時間, 週6回暴露し, 同時に週5回タバコ煙暴露を行つた群および対照群を作成した。この条件を継続して行い, 2, 4, 8, 16, 20, 24, 36, 52週後に屠殺し, 病理組織学的に検索した。<BR>タバ切煙とO3の複合暴露により, 気管, 気管支の障害と肺胞の障害がいずれも単独暴露肺よりも早期に起こる。気管では4週後に局所的に上皮が増生し, 数層をなすものがみられ, 気管支壁では浮腫や膠原線維の増生がみられた。また24週後の7例中1例に気管上皮の扁平上皮化生が認められた. 細気管支, 肺胞では4週後から, 細気管支上皮細胞の腫大と肺胞側への増生が認められた。このalveolar bronchiolizationを呈する過形成巣の細胞は2~3層をなし, 線毛上皮細胞や無線毛上皮細胞からなっていた。また, 扁平上皮化生を示すものもみられた。これらの変化は52週まで認められたが, 20週以後は線維化を伴い, 上皮細胞が単層となるものが増加し, 腫瘍の発生はみられなかった。