坂間 淳孝, 前佛 聡樹, 井上 雅仁, 中口 俊哉, 津村 徳道, 渡辺 良之, 堀部 大輔, 久保嶋 麻里, 露口 利夫, 三宅 洋一, 松原 久裕, 林 秀樹
千葉医学雑誌 89(4) 21-27 2013年8月
【目的】分光推定技術を応用した内視鏡画像処理の有用性を検証する。【方法】上部消化管内視鏡検査で得られた画像に対し,Wiener推定法で胃粘膜病変の分光特性を推定し,得られたデータを基に波長400nm〜700nmの範囲で5nm毎に単波長画像を作成。粘膜表層の変化を反映すると考えられる,500nm付近の3波長画像にRGBを割り付け,擬似的にカラー画像を合成する。(1)合成した画像を,原画像とインジゴカルミン散布像と比較し評価する。(2)この技術を実装した内視鏡システムを用い,上部消化管スクリーニング検査を実施。検査時間,生検率,病変発見率の変化を検討する。【結果】(1)原画像を0.0,インジゴカルミン散布像を1.0としたQuality Distanceでは,分光推定画像は0.64であり,原画像に比べ病変の視認性が向上した。(2)スクリーニングでの生検率は15.6%から16.5%に,groupIII以上の病変発見率は0.19%から0.37%にそれぞれ上がったが,検査時間に変化はなかった。【考察】可視光のうち短波長側(400-500nm)の光は,粘膜表層で反射される。この波長で得られた情報を強調すると,粘膜表層の変化が認識しやすくなる。本法を用いた画像処理は,波長組み合わせの自由度が高く,短波長側の情報を用いながら比較的明るい画像を合成することが可能であり,NBIの様に特殊フィルターを必要とせず,システムへの実装も容易である。よりスクリーニングに適した画像処理と考えられる。【結論】分光推定技術を応用した内視鏡画像処理は,病変の視認性を向上させる。また,上部消化管スクリーニングにおいて,検査時間に影響を与えず,効率的な生検が可能となることが示唆される。(著者抄録)