山口 元   
千葉大学人文研究 (34) 153-172 2005年
映画『エル・ニド』-スペイン語で『巣』を意味する-はその題名からも推測できるとおり、きわめて象徴性に富んだ作品である。監督のハイメ・デ・アルミニャン自身が脚本を手がけているが、『フィルムセンター83、スペイン映画の史的展望〈1951~1977〉』によればハイメ・デ・アルミニャンの作品の特徴は、平凡な登場人物、日常的な状況設定、よく組み立てられた会話、決して激越にならない或る種の批判的悲観主義と人物、口語的遣り取りに対する優れた観察である。つまり、厳密な〈技〉より文学的で物語的なものが優先し...