井上 孝夫   
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (69) 267-274 2021年3月
[要約] 安房一宮・安房神社に伝わるミカリ神事は忌部氏の祖神にゆかりの故事にまつわる祭祀として伝えられてきた。しかしその内実を検討してみると,長門一宮・住吉神社の御忌祭と和布刈祭が融合した形態であることに気がつく。この融合形態は上総地域から東京湾対岸の川崎,横浜,世田谷から,さらに府中にまで及び,ミカリ婆さんや一つ目の伝承へと変容する。その背景にあるのは,本格的な冬に向かう時期における生命力の復活への願いと製鉄作業の開始を告げるものと解釈することができる。