鈴木 弘樹

我が国では近年の精神医療の施策として、精神障がい者の退院促進に取り組んでいる。この施策では、地域定着を進める観点から、「住まい」の整備を併せて行うことが必要であることが示されている。そこで、精神病院退院後の精神障がい者へ退院後の治療環境となる部屋の空間要素の希望という視点から実態調査を行った。結果、特に内装、音など安心安全で治療効果が高まる住宅環境の整備状況はとは言えないことが分かった。さらなる調査で、在宅環境の具体的な実寸の調査を行い、精神障がい者が退院後の住宅環境、空間をどのよう捉え感じているかの傾向を読み、精神障がい者の地域定着につながる住宅環境の整備に寄与する知見を得る必要があった。

千葉大学西千葉キャンパスの北側に位置する校舎、理工系普遍教育棟(通称E号棟)における1階エントランス学生ホールの改修を実施設計として提案し、第一次工事を実施した。E号棟は主に理学部の学生が使用する地上5階建ての校舎で、1階には学生が自由に使用できる自習室、セミナールームがあり、2〜5階には主に物理や生物を学ぶ学生が集う実験室が配置されている。設計の対象は校舎に入ってすぐの広さ約108m^2のエントランスホールである。現状は入って右手に進んだ壁に大きな液晶テレビが設置されており、校舎の屋上に取り付けられたソーラーパネルの発電量をリアルタイムで確認できる。また、ソーラー発電のメカニズムや校舎の使用電気量をわかりやすく解説した映像も放映されているが、現在エントランスホール内にとどまれるような居場所がないため、通過導線として使用されているだけである