木村 亜維子
都市計画論文集 49(3) 681-686 2014年
本研究では、阿佐ヶ谷住宅の開かれたコモンをケーススタディとして、都市における「アイデンティティを育むコミュニティ醸成空間」としてのコモンの役割を明らかにする。コモンに関して、アクションリサーチ及びヒアリング調査を居住者と周辺居住者、プランナーに対して行なった。この研究から、以下のことが明かになった。(1)阿佐ヶ谷住宅に計画された大小さまざまな形態のコモンは、様々な管理主体の手により、多様に成熟していった。その中でコモンは、「植物を介した交流」など日常生活の中で、人びとの記憶が共有され、アイデンティティ表出の場となった。(2)アイデンティティが表出されたコモンは、居住者のみならず、近隣周辺居住者にも"市民の庭"として、利用され、日常生活の風景として愛着をもたれたコミュニティ醸成空間でもあった。(3)都市においてコモンは、アイデンティティを育み、またそれを共有することで、コミュニティ醸成空間としての役割を果たすことができ、今後の都市空間の持続可能性へも貢献しうると言える。