研究者業績

正木 治恵

マサキ ハルエ  (Harue Masaki)

基本情報

所属
千葉大学 大学院看護学研究院 教授
学位
博士(保健学)(1994年2月 東京大学)

J-GLOBAL ID
200901086673625517
researchmap会員ID
5000023118

外部リンク

論文

 150
  • Sachiko Waki, Yasuko Shimizu, Kyoko Uchiumi, Kawai Asou, Kumiko Kuroda, Naoko Murakado, Natsuko Seto, Harue Masaki, Hidetoki Ishii
    Japan Journal of Nursing Science 13(4) 478-486 2016年10月  査読有り
    Aim: The aim of this study was to examine a causal model of self-care agency by exploring the relationship between the structure of "body self-awareness" and the structure of the Instrument of Diabetes Self-Care Agency (IDSCA). Methods: The participants were 353 patients with diabetes. The internal consistency of the six items for body self-awareness was examined by calculating the factor structure using principal factor analysis and Cronbach's alpha. In order to examine the relationship between the seven factors in the IDSCA, a path analysis was conducted. Results: With regard to the factor structure, the factor loading of these five items was 0.511-0.743 (alpha = 0.739). In the path analysis, "body self-awareness" was influenced by the "ability to acquire knowledge" and had a direct effect (0.33) on the "motivation to self-manage", while "motivation to self-manage" had an effect (-0.32) on the "ability to self-manage". The Goodness-of-Fit Index was 0.974. Conclusion: "Body self-awareness" plays a part in the self-care operation process and serves as an intermediary factor to enable the performance of self-care operations by making the most use of self-care agency. Moreover, striking a proper balance between self-management that is focused on the treatment of diabetes and a person's ability for self-management of diabetes was found to be important.
  • 渡邉 賢治, 高橋 良幸, 正木 治恵
    日本難病看護学会誌 = Journal of Japan Intractable Illness Nursing Society 20(3) 177-189 2016年3月  査読有り
    我が国のMNDの人々は、延命治療に関する絶え間ない選択を迫られ、ゆらぎ続けている。MNDの人々の自律した選択を支えるために、入院中彼らと最も長い時間関わる病棟看護師への期待は少なくないが、看護師たちがどのような支援に適切さを意味づけているかは未だ明らかではない。その理由として、退院後もゆらぎ続ける患者のありようから支援を評価する困難さがあると考え、本研究では、患者の再入院の有無において特徴が異なる2つの病院の病棟の看護師計10名を対象とした面接調査を実施した。質的統合法による分析の結果、異なる背景をもつ病棟看護師にも、支援の適切さについて類似した意味づけ方があることが明らかになった。MNDの人々が病棟看護師をより頼らなくなるとき、研究協力者たちは支援の適切さをより明らかに意味づけていた。本研究の結果は「control」に関するMNDの人々の研究結果に通底するものがあり、支援の論理の新たな側面を示唆するものであった。(著者抄録)
  • 堀之内 若名, 正木 治恵
    千葉看護学会会誌 21(2) 55-62 2016年2月29日  査読有り最終著者
    本研究は文献検討を通し,生物学的製剤が導入され治療法が変化してきているわが国における,関節リウマチ患者への看護の課題を明確にすることである。医学中央雑誌web 版(ver5)を用い,「関節リウマチ」,「看護」をキーワードとした検索を行い,原著論文を対象とした。対象文献を精選し,最終的に37件を分析対象とした。研究者が,それぞれの文献著者が「関節リウマチ患者への看護の課題」を述べていると読み取った内容を取り出し,性質の類似性によって分類し,カテゴリー化した。143の内容から最終的に【病みの軌跡の中で対象者を長期的な視点で全人的にとらえる】【病みの軌跡に沿って,患者が主体的に症状を管理することを支える】【家族や多職種と連携して治療環境を整える】という3つが関節リウマチ患者への看護の課題として抽出された。The aim of this literature review was, through investigation of related literatures, to clarify the nursing tasks ofrheumatoid arthritis patients in Japan, where methods of treatment are changing since biologics has been introducedfor the treatment of rheumatoid arthritis patients.Original literatures were searched systematically from the electronic data base of Japan Medical Abstracts Sociaty(ver5). Keywords of rheumatoid arthritis and nursing were used singly during the search. In total, 37 studies wereincluded in this review for qualitative literature and categorized by similarity of the property regarding the nursingtasks of rheumatoid arthritis patients and researchers' point view about them. The following three points were revealedapparent as nursing tasks for rheumatoid arthritis patients in the end after reviewing 143 points retrieved from includedstudies.1. Viewing patients as a whole from a long-term perspective over the course of disease.2. Supporting patients so that they can manage their symptoms proactively over the course of the disease.3. Arranging treatment environment in cooperation with patients' families and multidisciplinary staff members.
  • 亀井智子, 堀内ふき, 正木治恵, 泉キヨ子, 松本佐知子, 島橋誠, 千吉良綾子
    老年看護学 21(1) 76-81 2016年  査読有り
  • 亀井 智子, 千吉良 綾子, 正木 治恵, 泉 キヨ子, 松本 佐知子, 島橋 誠, 堀内 ふき
    老年看護学 20(2) 23-35 2016年1月  査読有り
    【目的】老年専門職チームによる入院中の介入が,通常ケアと比較して,認知症,および認知機能の低下者を含む入院高齢患者群への在院日数の減少等の臨床指標が良好であるかをシステマティックレビューとメタアナリシスにより評価する.【方法】和英文献データベースを用いて2014年7月に検索を行い,(1)ランダム化比較試験,(2)65歳以上の入院患者への医療,(3)MMSE等により対象者の認知機能をスクリーニングしているか,または認知症と診断されている,(4)老年科医や老年専門看護師等の複数職種で構成する老年専門職チームによるアセスメントと介入を行っているという適格基準を満たした文献を評価した.解析には変量効果モデルを用い,リスク比と平均差を算出し,異質性はI<sup>2</sup>統計量により評価した.【結果】メタアナリシスには7文献301〜999人分を統合した.老年専門職チームによる介入は,認知症,認知機能の低下者を含む入院高齢患者群への平均在院日数を有意に減少した.しかし,入院中死亡率,退院時・退院後1年間のナーシングホーム入所の減少効果は明確ではなかった.【結論】老年専門職チームによる介入は認知症,認知機能の低下者を含む入院高齢患者群への平均在院日数の減少に有効であるが,エビデンスは限定的である.
  • 谷本 真理子, 高橋 良幸, 服部 智子, 田所 良之, 坂本 明子, 須藤 麻衣, 正木 治恵
    Palliative Care Research 10(2) 108-115 2015年6月  査読有り
    本研究は,一般病院における非がん疾患患者に対するエンド・オブ・ライフケア実践を熟練看護師の実践知から明らかにした.7名の慢性疾患看護専門看護師の実践事例のインタビューから質的統合法(KJ法)を用いて最終ラベルを抽出した.熟練看護師は,患者の生き方の意思決定を支える関わりと,患者家族の生き方に沿う関わりを,状態悪化の過程にある患者の自尊感情の回復,満足感,納得を指標に定めていた.一般病院では患者の苦痛対応策が不十分であることや,多職種とのケアの合意や他施設とのケア継続は困難を伴うが,熟練看護師は患者の意向を日々捉えながら,家族や地域ケア体制に患者の意向を浸透させる調整を行っていた.治療の場でのエンド・オブ・ライフケア実践では,家族,医療者も共に了解しながら患者を支え続けることができる支持的環境,診断初期より関わる医療者の意識向上と患者の意思決定を支える支援技術の向上が必要である.(著者抄録)
  • 劉 彦, 正木 治恵
    文化看護学会誌 7(1) 22-29 2015年5月  査読有り最終著者
    伝統的な中国医学において糖尿病は「消渇」と呼ばれる。中医学における糖尿病の治療は、数千年の実践を通して豊富な経験を積み重ねた独自の学術システムとして成り立っている。糖尿病中医看護の現状と課題を把握するため、中国における糖尿病中医看護に関する文献を検討することを目的とした。「糖尿病」・「看護」・「中医」という3つのキーワードを用いて中国知網(CNKI)に掲載された1984年〜2014年(9月30日)の中国国内の既存文献を検索したところ418件が該当した。そのうちの170件の研究論文について内容分析を行なった。文献検討を通して、「糖尿病中医看護に関する研究は年々増加している」、「糖尿病の未診断者に関する研究はまれである」、「病院における糖尿病中医看護は主流である」、「中国における糖尿病中医看護に関する研究は初期段階である」、「糖尿病中医看護の内容のバリエーションは豊富である」、「糖尿病中医看護を加えた糖尿病看護はより効果的である」という現状が分かった。今後の課題としては、「糖尿病中医看護の地域への拡大」、「糖尿病予防における中医体質看護の活用」、「糖尿病の中西医結合看護の詳細内容の検討」が挙げられた。(著者抄録)
  • 古川 由紀, 谷本 真理子, 正木 治恵
    文化看護学会誌 7(1) 13-21 2015年5月  査読有り
    目的 本研究の目的は、壮年期に脳卒中を発症した生活者のニーズに沿った看護を実践するために、壮年期に脳卒中を発症した生活者の健康に関する価値観を解釈的現象学を用いて記述し明らかにすることである。本研究における「健康に関する価値観」とは、個人がこれまで生きてきた過程で「よい」とみなす身体的・精神的・社会的健康及びスピリチュアリティヘルスに関する意識である。方法 脳卒中を発症した外来通院中の30歳から50歳代の11名に非構造化面接を行った。分析方法はBennerの提唱する解釈的現象学を用いた。結果 11名の脳卒中を発症した生活者の健康に関する価値観の解釈を試みた結果、<障害をもっても個人として理解してくれる人と共に'社会'で生きる><仕事はあるのが普通で大事><家族の助けがある><自己の生への変革に努力する><話をしてくれる人が大事><人に迷惑をかけない><死と隣り合わせで生きる><養生する><麻痺があっても普通に動く>という9つのテーマが見出された。考察 以上より、本研究によって示された9つの健康に関する価値観は、家庭・生活・健康の維持、社会参加、自立、自律性、回復の希求、生への価値、死生観を表すものであり、脳卒中を発症した生活者が、障害をもっていかに生きるかを指し示すものと考えられた。(著者抄録)
  • 眞嶋 朋子, 佐藤 禮子, 泰圓澄 洋子, 楠 潤子, 増島 麻里子, 岡本 明美, 渡邉 美和, 佐藤 美和, 浅野 美知恵, 正木 治恵
    千葉大学大学院看護学研究科紀要 (37) 57-64 2015年3月  査読有り
    This study aimed to clarify cognitive changes experienced by nurses who participated in a consultation support program for certified nurse specialists (hereafter referred to as "the support program"),and to propose improvements in certain aspects of the support program that could help foster consultation competence. The support program was developed by the principal and co-investigators in 2006 in order to help participants develop their competency continuously after graduation.The support program focuses on developing participants' competences in the management of role conflict in their institutions and their consultation skills, and fosters mutual support among all participants.Qualitative data were collected before and after the support program using a self-administered questionnaire. Participants (20 females)comprised 19 nurses with a cancer nursing specialty and1 nurse with a gerontological nursing pecialty.The participants reflected on cases they had encountered, and expressed their emotions, hopes, and desires through discussions in the support program. The following cognitive changes were experienced by nurses who participated in the program: <Expansion of understanding of assessments and consultation practices><Realization of the significance of ascertaining consultation issues><Awareness of methods of consulting with a consultee><Clarification of their own issues through reflection><Enhancement of motivation for performing consultations>These cognitive changes suggest new goals and aspects to consider for evaluation in support programs.本論文は,専門看護師教育課程の看護系大学院修了者が医療機関において,その能力を持続的に開 発するために作成した「看護系大学院修了者支援プログラム(以下,支援プログラム)」に参加した大学院修了者の,プログラム参加前後でのコンサルテーションに関する認識の変化を明らかにし,参加者のコンサルテーション実践力向上のための支援プログラムを改良するための示唆を得ることを目的とする. 支援プログラムは,研究代表者及び共同研究者らが2006年度に開発し,継続して実施しているもの で,目的は組織内における役割葛藤解決のための能力向上,コンサルテーション実践力向上,大学院修了者同士の相互サポートである.支援プログラムの参加者は20名(全て女性)であり,看護専門領 域はがん看護が19名,老人看護が1名であった.支援プログラムにおいて,研究対象者は事例に含まれる事実を振り返り,ディスカッションを通じて,研究対象者同士の感情,希望,願いなどを表現した.支援プログラム参加によるコンサルテーション実践に関する認識の変化として,<コンサルテーションのためのアセスメントや実践方法の理解の拡大><コンサルテーション課題の本質を見極める ことの重要性の実感><コンサルティのために行われるコンサルテーション方法への気づき><振り 返りによる自己の課題の明確化><コンサルテーションへの意欲の高まり>が示された.以上から,支援プログラムの目標と評価の視点についての示唆が得られた.
  • Yoshiko Miyawaki, Yasuko Shimizu, Kyoko Uchiumi, Kawai Asou, Naoko Murakado, Kumiko Kuroda, Harue Masaki, Natsuko Seto, Hidetoki Ishii
    Journal of Nursing Measurement 23(2) 326-335 2015年  査読有り
    Purpose: The purpose of this study was to develop a shortened version of the Instrument of Diabetes Self-Care Agency (IDSCA). Methods: In the development of the shortened version of IDSCA, intraclass correlation coefficient 2 (ICC2) analysis was done to determine items to be deleted. However, the 7 subscales were retained. The shortened IDSCA was evaluated for internal consistency, reproducibility, concurrent validity, criterion-related validity, and goodness of fit. Results: The shortened IDSCA included 35 items addressing 7 subscales. High ICC2 (.804) and a high Cronbach's alpha (.89) indicate internal consistency and reproducibility. A high correlation (.62) between the shortened version of the IDSCA and the Self-Care Agency Questionnaire indicated concurrent validity. Conclusion: The shortened IDSCA provides a reliable and valid measure of self-care agency of individuals with diabetes.
  • 寺尾 洋介, 高橋 良幸, 正木 治恵, 谷本 真理子
    千葉看護学会会誌 20(1) 47-54 2014年9月30日  査読有り
    本研究の目的は,特別養護老人ホーム入居高齢者への家族の関わりを支えるものを明らかにすることである。特別養護老人ホーム入居高齢者の家族5名(男性2名,女性3名,看取り介護ケアが導入されている高齢者3名の家族を含む)を対象に,半構造化インタビュー及び,家族-高齢者間の面会場面の参加観察からデータ収集を行い,質的統合法(KJ法)を用いて個別分析と全体分析を行った。全体分析より特別養護老人ホーム入居高齢者への家族の関わりを支えるものとは,【家族の関係:時・場所を超えて変わらない家族の関係性】【ホームでの出来事:関わるから得られる不思議さを伴う発見】【ホームでの出来事:ホームで支えられる双方の平穏】【ホームでの出来事:安楽・希望に繋がる日常の繰り返し】【繋がろうとする欲求:生老病死を受容しながらの愛情の共有】【繋がろうとする欲求:厳しい介護経験を超えての社会発信】の6つのシンボルマークから成る空間配置を示した。結果より,高齢者が衰退する中でも平穏で在り続けることで,家族自身の自己欲求を満たし,社会化をもたらし,家族自身の存在を支え直すものと考察された。家族-高齢者双方を支えるために高齢者が平穏で在り続ける援助の必要性,並びに家族がケア提供者と共に高齢者と関わり,家族の自己肯定感と家族-高齢者双方の安寧をもたらす援助の方向性が示唆された。
  • 清水 安子, 大原 裕子, 米田 昭子, 森 小津恵, 瀬戸 奈津子, 黒田 久美子, 西垣 昌和, 宮武 曜子, 数間 恵子, 正木 治恵
    日本糖尿病教育・看護学会誌 18(2) 151-159 2014年9月  査読有り
    【目的】インスリン療法に関するインシデント・アクシデント実態調査の自由記載欄の内容を整理し,具体的なエラーの状況を明らかにすること.【方法】200床以上の病院で研究協力の承諾が得られた192施設に調査票を郵送し,病院全体のインシデント・アクシデント報告を3ヵ月分返送してもらった.自由記載欄に記述された内容を分析した.【結果】自由記載には調査項目として設定されたもの以外に,(1)指示・準備段階では,「一時追加指示・指示変吏の見落とし」「指示内容の誤解」「血糖測定の未実施」などが,(2)実施段階では,「他の人のインスリンを注射」「期限切れのインスリンを注射」などが,(3)実施後確認・保管の段階では,「不適切な低血糖への対処」「インスリン注射後,食事せず」などがあった.【考察】インスリン治療の特徴として,(1)インスリンの種類や量が多様で変更されやすいこと,(2)インスリン投与方法・器具の操作方法が多様なこと,(3)インスリン療法が食事や血糖の状態に影響を受けやすいこと,(4)自己注射できることがあり,これらに起因するエラーから,それを踏まえたエラー防止対策の必要性が示唆された.(著者抄録)
  • 正木 治恵, 宮崎 美砂子, 佐藤 奈保, 時田 礼子, 島村 敦子, 岩瀬 靖子, 椿 祥子
    千葉大学大学院看護学研究科紀要 (36) 27-32 2014年3月  査読有り筆頭著者
    本実践報告は,2011年3月11日に発生した東日本大震災に対して,看護学研究科教職員が取り組んだ災害支援者派遣の取り組みについて,関わった派遣責任者,派遣者支援の調整者,派遣支援者の各々の立場からまとめた.3月14日に看護学研究科内に派遣本部を設置し,3月16日~22日の間,被害の甚大であった隣県に,看護師・保健師の資格を持つ教員合計7名を二期にわたり派遣した.災害亜急性期に、外部支援者が入りにくい被災地に対して、現地自治体職員の疲労がピークになる時期に派遣者を投入したことは,外部支援者派遣として看護学研究科がなしうる意義ある対応であったと考える.
  • 瀬戸 奈津子, 清水 安子, 石井 秀宗, 正木 治恵, Seto Natsuko, Shimizu Yasuko, Ishii Hidetoki, Masaki Harue
    大阪大学看護学雑誌 20(1) 1-12 2014年3月  査読有り
    原著本研究の目的は,糖尿病看護における実践能力育成プログラムの開発に向け,糖尿病看護に従事する看護師を対象に糖尿病看護実践能力評価指標の信頼性・妥当性を検証することである.糖尿病看護認定看護師の実践知より開発した評価指標をもとに,評価項目を洗練し,糖尿病看護認定看護師,ならびにその施設で糖尿病の治療を主目的に入院する患者の最も多い病棟の看護師計1,952名を対象に,無記名式郵送法による調査を実施した.1,056名の糖尿病看護に従事する看護師によるデータに対し,因子分析を行い,Chronbachのα係数を算出し,内部一貫性を解釈し信頼性を検証した.また,自己と他者でマッチングできたデータに対し,得点間のピアソンの積率相関係数を計算して併存的妥当性を確認した.その結果,【専門的知識・技術により患者の個別性に応じて看護過程を使った看護を提供できる】(26項目)【施設内外の活動を通して専門性を発揮することで評価が得られる】(20項目)【医療専門職のチームメンバーとして看護の専門性を発揮し評価が得られる】(14項目)【働きかけによってスタッフを成長させることができる】(5項目)【実践能力向上に努め課題を見出しながら自らの実践に根拠と自信をもてる】(8項目)【看護援助の効果として患者アウトカムが得られる】(9項目)【活動の効果を評価しつつ環境を獲得するための戦略を練ることができる】(5項目)【糖尿病看護にやりがいを感じられる】(2項目)【専門的知識・技術に自信をもった上でスタッフを育成できる】(5項目)の9因子を構成要素とした94項目からなる糖尿病看護実践能力評価指標の信頼性・妥当性が検証された.
  • 正木 治恵
    臨床透析 30(3) 263-269 2014年3月  
    本稿では,腎不全看護における「実践知」に着目し,透析医療における看護の「個別性」の今日的意義について論述した.変化する医療現場の中でも変わらない看護実践の本質を種々の文献を活用しながら概説するとともに,腎不全看護の特徴を踏まえ,本特集のテーマである標準化と個別化に関する考察を加えた.(著者抄録)
  • 須藤 麻衣, 谷本 真理子, 髙橋 良幸, 正木 治恵
    千葉看護学会会誌 19(2) 57-64 2014年1月31日  査読有り
    本研究の目的は,侵襲の大きい手術を受けた高齢者の術後移行期における自己の創造を明らかにすることである。侵襲の大きい手術を受けた入院中の高齢者5名(冠動脈バイパス術等・65~80歳・男性4名女性1名)を対象に看護援助を実施し,援助記録をデータとして収集した。分析は質的統合法(KJ法)を用い,個別分析と全体分析を行った。その結果,侵襲の大きい手術を受けた高齢者は,【術後の痛みや大変さに耐え,医療者に応じ,身体を休める】ことにより,【管理された身体への探究と確認】を行い,【入院生活の中で,身体の変化や扱い方を身をもって知っていく】。【不安と期待が交錯し,精神的にばらばらなことを心許せる他者にこぼす】ことを通して,【痛みや疲れやすさがある身体状態に応じて,手を借り,試行錯誤しながら自立していく】,【身体の回復に伴い,他者との交流が広がっていく】,【自分にしかわからない壮絶な体験を語ることで,過去と未来がつながっていく】。結果から,高齢者の術後移行期における自己の創造は,身体の変化への探求に始まり,その中で生じたゆらぎを言語化することでゆとりと多面的視点を得て,手術に伴う経験を統合し,行動の広がりを表すものである。そして,術後移行期にある高齢者を支えようとする他者の存在によって,自己の創造がなされていた。自己の創造は,術後移行期の高齢者の内面の世界に入り込み,支援していく際の有用な視点である。
  • 松本 晴美, 田所 良之, 正木 治恵
    日本リハビリテーション看護学会誌 = The Japanese journal of rehabilitation nursing 3(1) 27-33 2013年12月  査読有り
    脳卒中患者の「動き」が回復期リハビリテーション施設でどのように医療者とともにつくりだされているかを明らかにする調査を行った。研究対象は脳卒中患者5名とその患者に関わる医療者を対象とした。対象とした脳卒中患者は40歳代から80歳代の男性3名、女性2名であった。対象とした医療者は対象患者に関わった看護師、看護助手と訓練を担当した療法士であった。医療者と患者が関わり合い、「動き」を作り出した119場面と233分のフォーマルインタビューデータ(各対象患者28分から75分)からデータ化されたラベルは806枚であった。対象患者5名の個別分析結果から、得られた30のシンボルマークを類似性にて統合し、「動きの動機を共有」「動機が共有されないまま動く」「気づき合い動く」「互いの心と動きを合わせて動く」「強いる状況で動く」「生じる動きを共有」「工夫しあい動く」「望む生活に向けた動きの共有」の八つのまとまりに編成した。
  • 高橋 弥生, 垰, 谷本 真理子, 正木 治恵
    日本糖尿病教育・看護学会誌 17(2) 113-123 2013年9月  査読有り
    本研究の目的は、外来看護における糖尿病患者のセルフケア確立へ向けた対人援助技術を明らかにすることである。患者のセルフケア確立へ向けて看護師の支援が必要と判断された外来通院中の糖尿病患者8名に、研究者が看護実践者として行った看護プロセスの現象を対象とし、質的統合法(KJ法)により分析した。その結果、【対象の外来看護の支援に対する抵抗感軽減への配慮】、【問題状況の理解・把握のための医学情報収集と対象からの発言の促し】、【看護師に療養生活上の苦痛・苦労を語ることで得られる対象の安堵感の醸成】、【療養行動や自覚症状とは関係ない疑問や希望と捉えられる対象の関心事への相応】、【対象の経験した失敗や辛い出来事から導く予期的対処の備え作り】、【対象の症状変化など機を窺いながらの療養生活上の課題への照準合わせ】、【対象の関心に引き寄せた療養生活上の問題への参画】の7つの対人援助技術が明らかとなった。この結果より、対人援助技術は、対象のセルフケア確立へ向けた課題を見出し、焦点化していく援助技術として示したことに意義がある。(著者抄録)
  • 亀石 千園, 谷本 真理子, 正木 治恵
    日本看護科学会誌 33(2) 51-61 2013年6月  査読有り
    目的:パーキンソン病患者への看護の新たな示唆を得るために,パーキンソン病患者がもつ身体像を明らかにすることである.方法:入院中のパーキンソン病患者6名に看護援助を通してデータ収集を行い質的統合法(KJ法)を用いて対象者ごとの個別分析および全体分析を行った.結果:全体分析の結果,パーキンソン病患者のもつ身体像は【対処方法が確立した身体】でありつつも,状態によっては【自分ではどうしようもない身体】であった.また,身体の状態が良いと【良くなるかもと期待をもたせる身体】でありつつ,その一方で【その時々で寿命や死を知覚する身体】である.そして,【試行錯誤を重ね探求し創造する身体】と自分だけでは生活できない【他者とつながりをもちながら生活している身体】の2つの身体像がこれら4つの身体像へ影響していた.結論:パーキンソン病患者は,揺れ動く身体像をもち,その揺れ動きには核となる身体像が影響している.身体像形成の核へのアプローチにつながる看護援助の必要性が示唆された.(著者抄録)
  • 西田 伸枝, 田所 良之, 谷本 真理子, 正木 治恵
    文化看護学会誌 5(1) 12-19 2013年3月  査読有り
    本研究の目的は、在日コリアン高齢者1世にとって、文化を尊重したデイサービスとはどのような場所であるのか、その意味を明らかにすることである。在日コリアン高齢者の文化を尊重したサービスの提供を目的としているデイサービスに定期的に通う在日コリアン高齢者1世の3名を対象に、のべ31日間デイサービスでの活動を共にしながら、参加観察とインタビューを実施し、Spradleyの9つの意味関係を用いて質的分析を行った。在日コリアン高齢者1世における文化を尊重したデイサービスの意味とは、【在日の仲間とここにいる】、【不条理を生き抜いた誇りを確かめ合い、語り継ぐ】、【ネエサン達も一緒になって今ここを楽しむ】であった。それらから『生きてきた証を、今ここにいるみんなと味わい、楽しむ』というテーマが導き出された。朝鮮半島から海峡を渡って日本にやってきて、苦労しながらもここで生きてきたという人生を語り合い、後世に語り継ぎ、よくぞ生き抜いてきたという実感を味わう場所であった。そして、老いた今、同じような歴史をたどってきた在日の仲間、さらにスタッフらと共にこの場を楽しむことであった。高齢者にとって、文化を尊重したデイサービスとは、高齢者が人生で身につけてきたつながりを感じているものを共有できる他者がいて、ありのままの自分としてこれまでの道のりや大事にしているものを表出できる場であると示唆された。(著者抄録)
  • 天野 薫, 小粥, 谷本 真理子, 正木 治恵
    日本看護科学会誌 32(4) 3-11 2012年12月  査読有り
    目的:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復について明らかにすることである.方法:ステージIII期あるいはIV期の消化器がんに対するがん治療を受ける5名を対象に看護援助を実施し,その援助経過を記録したデータを質的統合法(KJ法)を用いて個別分析と全体分析を行った.結果:自己の回復は【悪化してゆく今ここにある身体の感受】【環境にゆるがされる現実の厳しさの認知】【安らぎを得るための方策の探求】【つながりをもつ他者との応答】【意味ある体験の確認】【今ここにいる自分の在り方の表明】の6つの性質から成り立つことが明らかになった.これは,悪化してゆく身体の感受を基盤に,対人関係に影響を受けるものであった.結論:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復は,他者と共に生きる人としての在り方を表すものであり,その人にとって意味ある時を生きてゆく可能性を内包したものである.本研究の結果は,人々が苦難の状況に置かれていても,その人らしく在ることを支援するケアの視点を示した.(著者抄録)
  • Masakazu Nishigaki, Yasuko Shimizu, Kumiko Kuroda, Kozue Mori, Yuko Ohara, Natsuko Seto, Akiko Yoneda, Yoko Miyatake, Keiko Kazuma, Harue Masaki
    NURSE EDUCATION TODAY 32(8) 892-896 2012年11月  査読有り
    The aim of this cross-sectional, nationwide study in Japan was to develop a support skill scale for insulin therapy (IT-SSS) and to evaluate its validity and reliability. The sample consisted of 1604 nurses at 123 hospitals throughout the country. The factor validity, known-group validity, convergent validity, discriminant validity and internal consistency of IT-SSS were assessed. IT-SSS consisted of 26 minimum and 25 standard support skills. They included 4 subscales for minimum skills: management strategy for hypoglycemia, education about insulin injection technique, individual assessment and support about insulin rejection, and collaboration with medical professionals and patient/family. Three subscales for standard skills: apprehensions concerning the will and emotion of the patient, management for blood glucose control, and coordination in insulin management. Cronbach's alpha coefficient was between 0.75 and 0.90, suggesting strong internal consistency. Multitrait analysis showed that convergent validity was complete, and discriminant validity was found to be almost complete in both minimum and standard skill scales (scaling success rates of 97.6% and 98.7% across all subgroups, respectively). Known group analysis clearly showed that specialist nurses have significantly higher skills than general nurses. These findings indicate that IT-SSS has a reasonable factor validity, convergent validity, discriminant validity, known group validity, and internal consistency. (C) 2011 Elsevier Ltd. All rights reserved.
  • 正木 治恵, 数間 恵子, 黒田 久美子, 清水 安子, 瀬戸 奈津子, 大原 裕子, 西垣 昌和, 宮武 陽子, 森 小律恵, 米田 昭子, 研究推進委員会
    日本糖尿病教育・看護学会誌 16(2) 210-213 2012年9月  筆頭著者
  • 廣瀬 穂積, 正木 治恵
    日本脳神経看護研究学会会誌 34(2) 137-144 2012年3月  査読有り
    本研究の目的は、脳卒中急性期の回復過程にある患者の主体性のあり様を明らかにすることである。急性期病院に入院中の、身体に機能障害をもつ脳卒中患者4名を対象とし、看護援助を実施しその援助記録をデータとした。データは質的統合法(KJ法)を用いて分析した。その結果【居ることで自らを醸し出す】、【自分なりに自他へ注意を向ける】、【自分のやり方で相手に伝え表わす】、【自分なりに身体を動かす】、【相手やその場に合わせて振舞う】、【自分を保持する】、【自分や他者を思いみる】の7つの要素で構成された主体性のあり様が明らかになった。結果で示された脳卒中急性期の回復過程にある患者の主体性は、意識障害や機能障害により他者にとってみえにくくなっている、人間がもつ基本的なかかわりの姿といえる。脳卒中急性期患者の主体性を捉えるにあたって、患者の様子や振る舞いの変化を、時間・空間軸で比較し文脈的に理解していくことが重要である。(著者抄録)
  • 眞嶋 朋子, 楠 潤子, 渡邉 美和, 岡本 明美, 増島 麻里子, 長坂 育代, 山下 亮子, 佐藤 まゆみ, 正木 治恵, 浅野 美知恵, 佐藤 禮子
    文化看護学会誌 4(1) 13-25 2012年3月  査読有り
    専門看護師(CNS)が必要とする看護管理者からの支援の内容を明らかにすることを目的に、全国の8医療機関のCNS・看護管理者各1名、計16名を対象に「CNSが期待される役割を遂行するための看護管理者からの支援」について半構成的面接を行った。その結果、CNSへの調査から得られた支援のニーズは、【CNSの思いを考慮に入れて関わる】【役割を組織に浸透させるためにCNSが自信をもてるように後押しする】【管理的視点の獲得を促すために具体的に助言する】【役割を組織に浸透させるために職場環境を調整する】【CNS活動を可能にするために勤務条件や職位に配慮する】【キャリア発展のために経済的に支援する】の6つに分類された。また、看護管理者への調査から得られた支援の内容は、【CNSとしての能力を高めるために相談・助言を行う】【役割を組織に浸透させるために他の医療職の間に入りCNS役割を表明する】【組織のニーズとCNS役割がつながるように定期的に情報交換する】【CNS活動を可能にするために勤務条件や職位に配慮する】【キャリア発展のために経済的に支援する】【CNSの活動を支えるために将来に向けた取り組みを展開する】の6つに分類された。
  • 田所 良之, 髙橋 良幸, 河井 伸子, 谷本 真理子, 正木 治恵, 吉田 由香, 曳地 陵子
    千葉大学大学院看護学研究科紀要 (34) 21-26 2012年3月  査読有り
    本実践報告は,千葉大学医学部附属病院の実習モデル病棟のひとつであるひがし棟5階病棟と千葉大学大学院看護学研究科・看護学部老人看護学教育研究分野との慢性疾患看護実習における協働的取り組みの報告である.新カリキュラム導入,成人・老人看護コア実習のスケジュールや内容の変更,大学病院新病院設立に伴うフロア・診療科再編などを受け,今後のよりよい実習方法を模索するために,協働的取り組みを試みた.病棟側,教員側合同で話し合いを重ね,副師長による看護スタッフへのアンケート結果,教員による学生へのアンケート結果を参考にしながら,効果的と思われるいくつかの取り組みを行い,評価をした.すなわち,病棟側から1)対象候補者の選定・事前の意思確認と担当医との調整,2)スタッフへの実習内容の周知など,3)師長や副師長による病棟オリエンテーション,4)写真や指導内容記載シートを活用した看護スタッフ間での学生の実習状況の可視化と共有,5)担当看護師の調整,6)ショートカンファレンスの実施とケースカンファレンスへの参加,7)看護スタッフへのポジティブフィードバック,教員側から1)学生が行える(行ってもよい)看護技術の明示と到達レベル自己評価票の提示,2)副師長との連絡・相談機会の確保,3)学生へのモデル病棟実習アンケート,が行われた.本取り組みの成果をもとに,今後,他の病棟での実習においても当該病棟管理者と話し合いをもち,取り組みを拡大していくことが期待される.
  • 眞嶋 朋子, 浅野 美知恵, 佐藤 禮子, 楠 潤子, 渡邉 美和, 岡本 明美, 増島 麻里子, 長坂 育代, 山下 亮子, 佐藤 まゆみ, 正木 治恵
    文化看護学会誌 4(1) 1_13-1_25 2012年  
    <p> 本研究の目的は,専門看護師(以下CNS)が,組織において期待される役割を遂行するための看護管理者からの支援を明らかにし,CNSが看護管理者との連携を十分に行い,効果的な役割を遂行するための方法を組織文化の観点から検討することである。<br> 対象は看護系大学院を修了後5年以内で,医療機関または介護施設において看護を実践している「がん看護」,「急性・重症患者看護」,「老人看護」領域のCNS,およびCNSを雇用している医療施設に勤務し,CNSの直属の上司となる看護管理者で,データは面接調査法により収集し,質的帰納的分析を行った。<br> その結果,対象者は,CNS8名,看護管理者8名で全て女性であった。分析の結果,CNSが認識した看護管理者からの支援は<CNSの思いを考慮に入れて関わる>,<役割を組織に浸透させるためにCNSが自信を持てるよう後押しする>等の6つに分類され、看護管理者の結果は,<CNSとしての能力を高めるために相談・助言を行う>,<組織のニーズとCNS役割がつながるように定期的に情報交換する>,等の6つに分類された。<br> 以上の結果から,看護管理者は,CNSに対し新しい職場環境適応のための支援を行っていることが明らかとなった。また看護管理者が組織全体をアセスメントし,組織の質を上げるためにCNSを意図的に活用していることも示された。経済的支援では,CNS活動を支える将来に向けた取り組みを示し,社会全体への働きかけの重要性が示唆された。CNSが効果的に看護管理者とコミュニケーションを通じた関係を構築するためには,組織文化の側面のアセスメントとコミュニケーション技法の習得が重要と考える。</p>
  • 天野(小粥) 薫, 谷本 真理子, 正木 治恵
    日本看護科学会誌 32(4) 4_3-4_11 2012年  査読有り
    目的:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復について明らかにすることである.<br>方法:ステージIII期あるいはIV期の消化器がんに対するがん治療を受ける5名を対象に看護援助を実施し,その援助経過を記録したデータを質的統合法(KJ法)を用いて個別分析と全体分析を行った.<br>結果:自己の回復は【悪化してゆく今ここにある身体の感受】【環境にゆるがされる現実の厳しさの認知】【安らぎを得るための方策の探求】【つながりをもつ他者との応答】【意味ある体験の確認】【今ここにいる自分の在り方の表明】の6つの性質から成り立つことが明らかになった.これは,悪化してゆく身体の感受を基盤に,対人関係に影響を受けるものであった.<br>結論:がん治療を受けながら下降期を生きる人々の自己の回復は,他者と共に生きる人としての在り方を表すものであり,その人にとって意味ある時を生きてゆく可能性を内包したものである.本研究の結果は,人々が苦難の状況に置かれていても,その人らしく在ることを支援するケアの視点を示した.
  • Masaki H, Nagae H, Teshima M, Izumi S
    Nursing research and practice 2012 820345-820345 2012年  査読有り
  • 大原 裕子, 瀬戸 奈津子, 米田 昭子, 森 加苗愛, 正木 治恵
    日本看護科学会誌 31(4) 75-85 2011年12月20日  査読有り最終著者
    目的:慢性疾患領域において医師と看護師間の協働が進んでいる先行事例を調査し,今後の医師・看護師間の役割分担の推進に向けた示唆を得ることを目的とした.方法:先行事例を選定し,医師・看護管理者,看護師を対象にヒアリング調査を行った.医師と看護師間の協働の内容や特色,体制の特徴について分析した.結果:4事例に調査を行った.役割分担・連携の内容は,(1)看護師による患者把握に基づいた薬剤調整のアセスメントと医師への報告,(2)療養相談や心理的支援,(3)医師による検査や薬剤処方の指示,(4)医師による簡単な治療説明と,看護師による療養生活に即した詳細な説明,(5)看護師による検査や薬剤調整,説明,経過観察,であった.効果は,患者の満足度の向上,医師の本来業務時間の増加等であった.課題は,役割分担に関する取り決めがないことであった.結論:慢性疾患領域における医師と看護師の新たな役割分担・連携のあり方が示唆された.今後の実現に向け,院内プロトコールやリスク管理体制の構築,医師・看護師の人材育成が求められる.(著者抄録)
  • 遠藤 和子, 清水 安子, 正木 治恵
    日本糖尿病教育・看護学会誌 15(2) 172-178 2011年9月  査読有り
    本研究の目的は、描画を用いた語りから2型糖尿病高齢女性の食卓の変容について明らかにし、この方法を看護援助に用いるための示唆を得ることである。方法は、2型糖尿病歴30年の70歳代の女性から、「これまでの生活の中で営んできた食卓」について、描画の記入と語られた内容をデータとし、出来事の経過や時間に添って3場面に分け、語りのまとまりを中心的主張が一つだけ入るように要約し、類似で集約してテーマを抽出した。結果、食卓は「子どもの頃の食卓」「賄いの仕事を始めて糖尿病が診断されてからの食卓」「弟宅に同居した現在の食卓」の3つの場面に変容したが、その中で変わらず一貫したものとして、食事をつくることの価値が表れた。これは、食事におけるその人らしさを示すものとなり、描画を用いたナラティヴが表出を容易にしたと考えられた。並びに、食事療法を、食卓の営みから捉えることの重要性として看護援助への示唆を得た。(著者抄録)
  • 河井 伸子, 清水 安子, 正木 治恵
    日本糖尿病教育・看護学会誌 15(2) 128-136 2011年9月  査読有り
    本研究は、2型糖尿病とともにある人の連続性(Continuity)を明らかにすることを目的とし、外来通院中の5名を対象に面接調査を行い、その逐語内容を質的統合法(KJ法)により分析した。その結果、2型糖尿病と共にある人の連続性は、【変化が実感できないことによる現状把握の困難さ】、【身体状態の不確かさからくる将来を見据えることの不安定さ】、【人生上の出来事によって引き起こされた自己の再考】という現在-未来の不連続の中で、【楽しみの実感を通した望むあり方の志向】、【身体状態悪化の回避と健康の維持】、【生活調整とのすりあわせによる習慣の維持】といった形で連続性を保持し、この全体が【自己を超えた意識の広がり】へとつながっているということが明らかとなった。この結果より、2型糖尿病とともにある人が未来を見据え望むあり方に沿って生活調整出来ることを支援する際、連続性をともに見いだしていくことが重要であることが示唆された。(著者抄録)
  • 清水 安子, 内海 香子, 麻生 佳愛, 村角 直子, 黒田 久美子, 瀬戸 奈津子, 正木 治恵, 石井 秀宗
    日本糖尿病教育・看護学会誌 15(2) 118-127 2011年9月  査読有り
    本研究の目的は、開発中の糖尿病セルフケア能力測定ツール(以下、IDSCAと略す)の信頼性・妥当性を検討することである。セルフケア能力測定ツールの開発は、第1段階:メタデータ分析による糖尿病患者セルフケア能力の要素の抽出、第2段階:糖尿病患者セルフケア能力測定項目の作成、第3段階:専門家会議に基づくIDSCA(試案)の作成、第4段階:IDSCA(試案)の試用による内容妥当性と実用可能性の検討、第5段階:試用に基づくIDSCA(修正版)の信頼性・妥当性の検証の5段階で進めており、本研究は、その第5段階となる。368名の糖尿病患者に調査を行った結果、8要素77項目のIDSCA(修正版)は、因子分析により、第I因子【自分らしく自己管理する力】12項目、第II因子【自己管理の原動力】8項目、第III因子【モニタリング力】6項目、第IV因子【応用・調整力】9項目、第V因子【知識獲得力】7項目、第VI因子【サポート活用力】5項目、第VII因子【ストレス対処力】7項目、の合計7因子54項目に洗練した。この54項目のIDSCAのChronbachのα係数は0.936で内的整合性が保たれ、再検査信頼性係数は0.725で再現性が確認された。本庄氏の慢性病患者のセルフケア能力の質問紙との相関係数は全体で0.645となり収束的妥当性が支持されたが、基準関連妥当性の指標となる3ヵ月後のHbA1cとの相関係数は-0.145と小さな負の値に留まった。今後は、妥当性の確認を継続するとともに、看護援助の効果を測定するツールとして活用するために、看護援助前後のIDSCAの得点の変化についての検討が必要と言える。(著者抄録)
  • 田道 智治, 鳥田 美紀代, 正木 治恵
    老年看護学 15(2) 44-50 2011年6月  査読有り
    医療場面における,認知症患者のその人らしさを支える看護実践を明らかにし,構造として示すことを目的に,認知症専門病棟の看護師へ参加観察と半構造化面接を行った.得られたデータを,複雑な要素の意味や繋がり,関係を空間的に示すことで,全体の構造的な理解を可能にする質的統合法(KJ法)で分析した結果,医療場面におけるその人らしさを支える看護実践を,本人を【置き去りにしていないか自問自答】しながら,【想定外のパワーの発見を期待】し【医学的かつ了解・受容可能な方法模索】するなかで,【快適な生活を創造しようと志向】が変化し,それに応じて【独自世界の支援方法を模索】し方法を獲得した結果,本人にとっての【well beingを知覚】し,さらに【自身も喜びを実感】するという構造として示した.この構造は,その人らしさが脅かされやすく看護師も困難を感じるとされる医療場面において,患者のその人らしさを実現し,看護師もやりがいを見出す手がかりとなる可能性が示唆された.
  • 遠藤 和子, 正木 治恵
    文化看護学会誌 3(1) 1-9 2011年3月  査読有り
    中高年女性の2型糖尿病とともにある有り様を、食卓の営みから示し、食卓の営みを語ることの看護援助への示唆を得るため、食事療法を営む2名の中高年女性の食卓の語りを質的帰納的に分析した。その結果、食卓の営みを語ることは、生活を共にする人との中で影響を受けながら、その人自身の生活者としてのありようが投影されることを示していた。食卓の営みを看護師に向かって語ることは、語り手が聴き手である看護師に理解して貰おうと進退の問題を含めて語り、聴き手としてのやり取りを通じて確認、意味づけを行うことで、自己のジェンダーアイデンティティーを見つめることができる。そして糖尿病と共にある自己にも目を向けることが可能になると思われた。
  • 清水 安子, 大原 裕子, 米田 昭子, 森 小律恵, 瀬戸 奈津子, 数間 恵子, 黒田 久美子, 西垣 昌和, 宮武 陽子, 正木 治恵, 日本糖尿病教育, 看護学会研究推進委員会
    日本糖尿病教育・看護学会誌 15(1) 25-35 2011年3月  
    本研究は、糖尿病看護スペシャリストの実践知をもとにインスリン療法を行う糖尿病患者へのベストプラクティスを抽出することを目的に、インスリン療法を行う患者への熟練看護師の看護実践内容を含む先行研究と慢性疾患看護専門看護師と糖尿病看護認定看護師による実践内容から得られた実践知を集約し、それらを記述データとして、糖尿病看護の5つの実践的役割の視点(瀬戸、2007)から看護実践内容を分類し、類似する意味内容をまとめ、専門家会議を経て、ベストプラクティスとして整理した。その結果、【患者に看護援助を提供する役割】109項目、【医療専門職と協働する役割】16項目、【スタッフの援助技術を高める役割】18項目、【組織を介して活動する役割】5項目、【自己啓発・自己研鑽に努める役割】4項目に整理された。ベストプラクティス項目は、「その患者なりに(の)」「必要に応じて」といった曖昧と思われる表現が残されたままとなった。これは、糖尿病看護スペシャリストの実践が、まず「その患者なり」の「必要」の程度を瞬時かつ的確に判断しそれに合わせて非常に臨機応変な状況判断のもと、援助を展開しているからであると言える。そのため、実践内容に具体性にかける点も残る結果となったが、糖尿病看護スペシャリストの実践知から得られた項目を看護実践を振り返る指針として活用することが、看護実践の向上につながるのではないかと考えられた。(著者抄録)
  • 本田 智子, 高橋 良幸, 谷本 真理子, 正木 治恵
    日本腎不全看護学会誌 12(2) 72-80 2010年11月  査読有り
    終末期維持透析患者の看護経験についての語りから得られた実践知について検討するため、透析室勤務経験5年以上の看護師18名を対象に、フォーカス・グループ・インタビューを施行し、逐語録を分析した。その結果、「透析は慢性的に長い経過での死であり、日常生活のなかで終末期という時期の見極めの難しさがある」などの45の主題が抽出された。透析看護師は透析生活の中で築いた関係性により患者・家族にとって信頼される存在となっており、長年の患者・家族との相互関係や、生活の中での変化を見出す視点という透析看護の特性を活かした終末期看護がうかがわれた。死を迎える過程において、透析導入時から適宜タイミングを見定めながら痛みの軌跡を患者・家族・医療者がともに描き、透析を受けながら生きる過程を尊重していくかかわりの必要性が示唆された。
  • 上床 明子, 谷本 真理子, 正木 治恵
    日本循環器看護学会誌 6(1) 88-96 2010年8月  査読有り
    本研究の目的は、緩解と増悪を繰り返して進行する拡張型心筋症(以下、DCM)とともに生きる患者が生活調整を行うあり様を明らかにし、看護上の示唆を得ることである。DCMで入院中の患者3名へ、看護援助を行った援助記録データとし、患者が行っている「生活調整」に関わるデータを、質的統合法(KJ法)の手法を用いて分析した。対象者は、【身体そのもので緩解と増悪を感じとった感覚を基準として、身体に負担がかからないような行動を取捨選択することや身体へ有益な行動を探し求める】【身体で感じ取る感覚から身体の限界を見極めながら役割を果たしている】【手術前の辛い身体感覚と今の身体を比較し、可能なことをやってみる】【以前の身体感覚や経験を基準として心負荷がかかる暮らしを予測し、自分のスタイルにあった方法で対処する】など、身体感覚で感じ取ったものを基準として身体と生活のつり合いを取っていた。また、無症状期にある患者は、【医療者の評価や医師が出す制限・指示を借りて自分の基準とし、自分はそれに忠実に従う】こともしていた。看護師は、患者が身体感覚を取り入れた援助を必要としているのか、それとも指示や説明を必要としているのかを専門的に判断し、援助する必要性が示唆された。(著者抄録)
  • 小笠原 真理, 谷本 真理子, 正木 治恵
    千葉看護学会会誌 16(1) 53-60 2010年8月  査読有り
    本研究の目的は看護師が高齢者の個別性の尊重に向けて,日々の看護における過去の背景を活かした看護から得ている実践的知識を構造的に明らかにすることである。高齢者看護に熟練している一般病棟に勤務する看護師6名に対し実施したインタビューを質的統合法(KJ法)を用いて分析を行った。その結果,看護師は高齢者の過去の背景を活かした看護から,【過去の職業や背景を把握することで今を生きる高齢者を理解しやすくなる】を基盤とし【過去の背景を理解する姿勢でいると互いに気持ちが共有できる】ことで,【過去の背景とのつながりを推測することで,高齢者に近づくことができて看護が変わる】ことがある。そして,【高齢者の過去の背景を共感し把握してケアに活かせることもあるけれど,それは誰もがみな共感できるわけではない】ことや,【過去の背景を知ることは看護師の姿勢に反映するが共有することで画一的な援助になるかもしれないのでそこが1番難しい】経験を積み重ね,【場の制限や理解することへの限界がある中で高齢者の価値観を尊び行うケアのすり合わせに,高齢者の過去の背景を活かす】といった実践現場の環境とのすり合わせを図りながら,高齢者が過去の背景から培ってきた価値観を尊重するための実践的知識を獲得していた。以上より,一般病院において高齢者の過去の背景を活かした看護から得ている実践的知識には,個別的なケア実践においての意義と,その内容を他者と共有して行うケア実践への課題があることが示唆された。
  • 谷本 真理子, 黒田 久美子, 田所 良之, 高橋 良幸, 島田 広美, 正木 治恵
    日本看護科学会誌 30(1) 25-33 2010年3月23日  査読有り最終著者責任著者
    目的:高齢者ケアにおける日常倫理に基づく援助技術を明らかにする.方法:老人看護を専門とする5名の看護師の,日常の看護実践の参加観察とインタビューにより収集したデータを,質的統合法(KJ法)を用いて質的に分析した.結果:高齢者ケアにおける日常倫理に基づく援助技術は,高齢者ならびに高齢者ケアにおける信念と前提を基盤に,看護師の内省を中核として高齢者をとりまく全体からケアを導く技術である.その性質には,【人格ある人/当たり前の生活】【尊厳ある最後の時に関わる】【高齢者の能力は見方次第】【高齢者一人ひとりの個別性の理解と尊重】【ケアする側される側のもちつもたれつの充足関係】【状況における最善のケア】が取り出された.結論:本研究結果は,高齢者の日常ケアにおける看護の専門性を明示し,専門技術としての習熟と洗練に向けて活用することができる.(著者抄録)
  • 張 平平, 正木 治恵
    文化看護学会誌 2(1) 40-47 2010年3月  査読有り最終著者
    日本は先進諸国の中でも類を見ない速さで超高齢化社会に突入した。このような背景の下、1990年に老人看護学が成人看護学から独立し、老年看護の学問としての確立が一気に加速された。20年間の発展を通じて日本の老年看護は多くの実績を蓄積し、高齢化の急速な進展に立ち向かいながら多大な貢献を成し遂げている。一方、目覚しい経済発展を遂げつつある中国は、社会保障制度が未だ健全に整備されないままに高齢化社会に向かいつつあり、中国の老人医療社会保障システムの整備は喫緊の課題である。これらの課題を解決するには、アジアの手本となる日本の老年看護の国際発信が必要である。
  • 高橋 良幸, 張 平平, 清水 安子, 正木 治恵
    文化看護学会誌 2(1) 11-19 2010年3月  査読有り最終著者
    糖尿病予防教室に参加した40歳以上の男女10名にグループインタビューを行い、自分の身体についてどう思うか尋ね、語られた内容をKJ法で分析した。その結果、以下の7カテゴリーが抽出された。1)身体に起こる影響の理解。2)引き起こされる糖尿病や障害の予想。3)引き継いでいる血・健康・糖尿病。4)自己の身体の理解と弱点の克服に向かう関心。5)指標を用いての判断とそこから生じる意欲の揺れ動き。6)不確実な身体。7)生活の中で自然とつくられる身体。
  • 大原 裕子, 中野, 清水 安子, 正木 治恵
    日本糖尿病教育・看護学会誌 14(1) 11-21 2010年3月  査読有り
    本研究の目的は、糖尿病患者に身体の心地よさに働きかける看護援助を行い、セルフケアを視点とした自己を取り巻く生活や身体に対する認識や思いを中心に、どのような反応が得られるのかを明らかにし、本看護援助の意義について考察することである。セルフケアに向き合えないでいると捉えられる外来通院中の成人糖尿病患者6名を対象に、看護援助を行いつつ対象者の言動をデータ収集し質的に分析した。その結果、【マッサージの場による研究者との居心地の良い距離感】【自分の身体や病気に掛り合う家族支援や自分なりの尽力】【病気がもたらすやるせなさ】【自分の身体を巡る探究】【身体に重きを置いていない生活の省察】【心身が癒されるマッサージの場によって、自らを癒す力が引き出される】の6つの反応が明らかとなった。以上より、身体を接点にマッサージを介して「心地よさ」に働きかけた看護援助の場は、あるがままの自己の吐露から自己の身体の探究・省察へ、そして自らを癒す力が引き出されていたと考えられ、患者自身が自分の身体に対する応答性を高めていくかかわりとして、糖尿病患者のセルフケアへの援助の一環として位置づけられることが示唆された。(著者抄録)
  • 清水 安子, 黒田 久美子, 内海 香子, 森 小律恵, 麻生 佳愛, 村角 直子, 正木 治恵
    日本糖尿病教育・看護学会誌 13(2) 146-157 2009年9月  査読有り
    本研究は、先行研究に基づいて開発した8要素69項目からなる糖尿病患者のセルフケア能力測定ツール(IDSCA)(試案)を5名の看護師が19名の糖尿病患者に試用し、その測定結果をもとに、質問項目の表現の適切性、内容妥当性、実用可能性について検討した。表現の適切性:「答えられない」との回答があった質問項目は7項目で、表現をよりわかりやすく、また多様な患者の状況に対応できるよう変更する必要があることなどより、患者の能力の違いを把握できる表現へと変更する必要がある点が明らかになった。内容妥当性:天井効果を示したと考えられる項目が8項目あるなど、いくつかの項目について内容が妥当かどうか検討する必要があると考えられた。実用可能性:回答所要時間は平均48.1分で、項目を削減し短縮する必要があると考えられた。これらの結果を踏まえ、IDSCA(試案)を修正し、対象者数を増やし計量心理学的解析手法を用いて基準関連妥当性や内的整合性など、妥当性・信頼性の検証を行っていく必要がある。(著者抄録)
  • 谷本 真理子, 鳥田 美紀代, 田所 良之, 高橋 良幸, 正木 治恵
    千葉大学看護学部紀要 (31) 27-31 2009年3月  査読有り最終著者
    本学3年次後期から4年次に実施している老人ケア施設における老人看護実習においては、平成19年度から高齢者理解のための方法として、教員が学生と高齢者とのかかわりを積極的に聴く、ナラティブ面接と称する面接法を取り入れている。学生はナラティブ面接に先立ち自分の描く高齢者像を絵にして持参し、これを示しながら自分が受け持つ高齢者について教員に語るものである。ナラティブ面接は、9日間の老人ケア施設における実習5、6日目に、実習担当教員以外の老人看護学教員と個別に1時間程度行っている。本稿では、ナラティブ面接を行うことで、学生がどのように高齢者理解を深めているかを、自記式調査票を用いて調査した。得られたデータを質的帰納的に分析した結果、【自分の捉える高齢者の全体像が具体化した】【高齢者を捉える多面的視点に気づき、吟味した】【高齢者の情報の断片が、全体像との関連で整理されてつながりをもち、統合された】【高齢者のありように近づいた】【高齢者に向き合う自己のありように気付いた】【自分がケアをするために、何をどのように考え、何をすべきかが見えてきた】【高齢者理解のためのイメージを描くことの意義と限界を理解した】という7つの内容が抽出された。本ナラティブ面接は、高齢者理解に基づく看護実践能力を高めるために、学生の客観視を助け、学び続けることを支える教育方法として意義があると考えられた。
  • 正木 治恵, 張 平平, 周 宇彤
    文化看護学会誌 1(1) 22-30 2009年3月  査読有り筆頭著者責任著者
  • 正木 治恵, 山本 信子
    老年看護学 13(1) 95-104 2008年11月  査読有り筆頭著者
    本稿は,高齢者のコミュニティにおける歴史的・文化的価値観や信念など高齢者の健康を捉えるための文化的視点を文献レビューにより明らかにすることを目的とした.データベースに,医学中央雑誌web版とCiNii(国立情報学研究所論文情報ナビゲータ)を使用し,キーワードには『「ケア」or「健康」』×『「文化」,「日本文化」or「日本 and 伝統」』を用いた.選定した26文献を検討した結果,高齢者側の文化的視点として,【大いなるものの感受】【人との関わり】【自己実現】【健康・経済の安定】が明らかになり,これらは高齢者の個人的なもの,ならびに地域とのつながりや,生活している土地との関連をもつものであった.また,ケア提供者側の文化的視点として,生活者として高齢者を捉えること,日常生活行為やケア内容に文化的視点を取り入れること,ならびに介護者と要介護者との関係を日本文化的解釈を含めて理解することが示された.これらの文化的視点は,高齢者の健康を包括的に捉えるうえで有用と考えられた.
  • 正木 治恵, 山本 信子, 山本 則子, 石垣 和子
    日本糖尿病教育・看護学会誌 12(2) 136-144 2008年9月  査読有り筆頭著者責任著者
    高齢者訪問看護における糖尿病ケアの質評価指標を作成することを目的として、次の3段階からなる調査を実施した。(1)訪問看護における糖尿病ケアに関する日本の看護実践の文献レビュー、ならびに訪問看護ステーション1施設でのインタビュー調査から、糖尿病専門外来ケアの経験を有する研究者2名が質評価指標原案を作成した。(2)高齢者訪問看護のエキスパート7名と研究班15名で討議し、質評価指標原案の内容妥当性について討議した。(3)全国の訪問看護ステーションで働く看護師を対象に、糖尿病ケアの実践内容に関する自己評価の実態調査を行った。この結果から、訪問看護における糖尿病ケアに関する28項目の質評価指標を作成した。全国調査においては1,331の訪問看護ステーションに調査票を発送し、有効回答数353(有効回答率26.5%)を得た。項目別の実施率では、低血糖症状の確認や服薬などの管理が徹底されていた一方で、事前の医師との連絡や体重測定、口腔ケアなどの実施率が低かった。必要項目が網羅されているかの質問に関しては86.3%が「とても・まあそう思う」と評価した。本質評価指標は、高齢者訪問看護における糖尿病ケア実践に対し、おおむね適用可能性をもつことが示唆された。(著者抄録)
  • 坂井 さゆり, 田所 良之, 清水 安子, 正木 治恵
    千葉看護学会会誌 14(1) 62-70 2008年6月30日  査読有り
    本研究は,療養病棟における高齢者と看護師の入浴援助場面の構造を明らかにし,ケアリングに影響する療養病棟の文化・環境を考察することで,療養病棟におけるケアリング実践への示唆を得ることを目的とした。療養病棟をもつ2施設(X,Y 療養病棟)でマイクロエスノグラフィーのフィールドワークプロセスに基づき,参与観察とインタビューを繰り返しながら,以下の3場面をKJ 法で分析し構造化した(X 療養病棟のA 高齢者とC 看護師,X 療養病棟のA 高齢者とD 看護師,Y 療養病棟のB 高齢者とE 看護師を中心とした入浴援助場面)。結果・考察を以下に示す。療養病棟の高齢者は「ここで世話になる覚悟」で入院し,「三歩下がった優しい看護師」を期待しているが,多様な障害により,看護師と理解し合えずにいた。療養病棟看護師は,自己の高齢者観や介護職とのコミュニケーション不足がケアに影響していた。看護師はまた,制約された人員配置と時間・空間により,高齢者の安全を守ることが優先され,安楽性・自律性へのケアが脅かされていた。療養病棟だからこそケアを充実させたいという思いが,ケア提供者中心の会話となっていた。療養病棟の入浴環境は,高齢者に集中できる時間と空間を確保することが必要であった。療養病棟でのケアリング実践は,機械的流れ作業の中の数分間の関わりであっても,「高齢者の気持ちを感じ取ろう」とする意識を持ち続けることが重要であると考えられた。We studied the structure of assistance provided by nurses to elderly patients taking baths in recovery wards, and evaluated the effects of the culture and environment of recovery wards on caring to obtain implications for caring practice in such wards. Interventional observation and interviews were repeated by the field work process of microethnography at 2 facilities with recovery wards (X and Y wards), and the following 3 situations were analyzed and structuralized by the KJ method (assistance in taking a bath of elderly patient A by nurse C in X ward, patient A by nurse D in X ward, and patient B by nurse E in Y ward). Elderly patients in recovery wards were admitted &quot;with readiness to be cared for&quot; and expected &quot;reserved and sympathetic nurses&quot;, but they could not achieve mutual understanding with nurses due to diverse disabilities. Care by nurses in recovery wards was affected by their view of elderly people and lack of communication with care professionals. Protecting the safety of elderly patients was their primary concern through restrictions in manpower, time, and space, and care for comfort and independence was jeopardized. Thoughts that care should be further improved in recovery wards were shared primarily among care-providers. Time and space allowing nurses to concentrate on elderly patients were necessary for bathing them in recovery wards. Continued sympathy for the feelings of elderly patients is considered important in the care of patients in recovery wards, even during contact of a few minutes in routine care.

MISC

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  • 正木 治恵
    日本認知症ケア学会誌 20(1) 16-16 2021年4月  
  • 坂口 葵, 正木 治恵, 石橋 みゆき, 大原 裕子
    日本看護科学学会学術集会講演集 40回 P17-014 2020年12月  
  • 正木 治恵
    文化看護学会学術集会プロシーディング 12回 34-35 2020年7月  
  • 清水 安子, 正木 治恵, 柴山 大賀, 瀬戸 奈津子, 中山 法子, 日本糖尿病教育・看護学会将来検討委員会(2016年9月〜2018年9月)
    日本糖尿病教育・看護学会誌 24(1) 35-39 2020年3月  
    <文献概要>はじめに 日本糖尿病教育・看護学会(以下JADENと略す)の将来検討委員会は,2012年に数間恵子理事長のもと「糖尿病看護における社会への貢献という見地から,学会の活動,組織,重点施策など将来の方向性を検討し,理事会に提言,提案すること」を目的として発足した委員会である.この第3期の委員会では,委員会活動の方向性として当時の稲垣美智子理事長より「学会としてどのような影響力を糖尿病医療に起こしていきたいか,学会が将来どのような力を付けていったらよいか,という構想の議論と,その仕組みづくりを検討する」ことが示された.そこで委員会では将来の方向性を明確にするために,2017年〜2021年の5か年計画重点目標を提示した(日本糖尿病教育・看護学会,2017;図3参照).これは,社会や医療への貢献のために,糖尿病医療チームでの協働が重要であると考え,糖尿病学会の「『第3次対糖尿病5カ年計画』における重点と目標」(日本糖尿病学会,2015)(1.糖尿病先端研究の結実,2.超高齢社会に向けた基盤整備,3.包括的データベースによるエビデンス構築,4.将来の糖尿病対策を担う人材育成,5.国民への啓発と情報発信)に呼応する形で設定し,2017年915日社員総会で発表した.さらに,その5つの重点目標の各々について主担当となる委員会を決定し,担当委員会と将来検討委員会とが連携することで,目標達成に向けた活動が行える仕組みを整えた.こうしたJADENとしての活動の方向性を決める委員会内での議論の中で,「地域包括ケアの時代において多職種連携が重要で,糖尿病教育は看護師以外も行うため,看護師にしか分からない言葉を使っていては他の職種には通じない」「他の職種からみて看護職の果たす役割がはっきりしていない」「医師は糖尿病治療ガイドのように拠り所があるが,看護師にはそうした拠り所がない」といった意見も出された.5か年計画として重点目標を示すだけでなく,看護職にも他の職種にも分かりやすい形で,糖尿病教育・看護が何を大事にしてどんな役割を果たすべきなのかを明確化する必要があるのではないか,また,それが明確化されることで,重点目標に向けた取り組みの方針もぶれないのではないかとの結論に至り,これまでのJADENの活動の経緯も踏まえ,「糖尿病教育・看護の核となる機能」を明確化する取り組みを行うこととなった.ここでは,「糖尿病教育・看護の核となる機能」を明確化していったプロセスを紹介する.

書籍等出版物

 25

講演・口頭発表等

 67

共同研究・競争的資金等の研究課題

 40