チュラカ バリヤヌット, 丸尾 達, 高垣 美智子, 篠原 温
熱帯農業 47(4) 260-265 2003年12月1日
熱帯における野菜の育苗に,ピートモスを主体とした輸入培養土を用いることは高価であり,非現実的である.このため,熱帯地城で産出される安価な有機質培地が利用できれは,育苗生産コストを抑えることが可能であると思われる.しかしこのような有機質培地の物理性および化学性に関する情報は少ない.そこで,熱帯地域で産出される有機質培地の性質を調査した.供試有機質培地は,やし殼(CC),もみ殼(RH),もみ殼くん炭(RHC),落花生莢くん炭(PHC),バガスチャコール(BGC)および対照のピートモス(PM)とした.これらの培地の物理性を調べたところ その気相率から1)低気相率培地,PM (27%),CC (34%),RHC(36%)とBGC(37%),および2)高気相率培地, RH (71%)とPHC(53%)の二つのグループに分けることができたため、気相率の低い培地と高い培地を組み合わせ,1:1の比(v/v)で均一に混合しそれら混合培地の物理性(仮比重, BD,総孔隙率,TP,容水量,WHC,気相率, AP)および化学性(土壌溶液中oH,EC,無機成分含量)の特徴について調査した.混合培地の仮比重は109-123 mg・cm^<-3>にあり,容水量および気相率はそれぞれ48-56および26-36%の範囲に納まった.すなわち,全ての混合拓地は,野菜の育苗ための適切な物理性の範囲を持ち,化学性としても,PM . PHC, RHC:RHおよびBGC:RH混合培地は適切なEC値の範囲(0.4-1.0dSm^<-1>)にあった.以上より,熱帯地域で産出される有機物を用いることによって,安価で安定した育苗培他の開発が可能であると言える.